最新記事
米大統領選

<米議会襲撃>大統領選の結果を覆す陰謀に最高裁判事クラレンス・トーマスの妻が果たした役割

Ginni Thomas Under Scrutiny Following Arrest of Michigan Fake Electors

2023年7月20日(木)19時39分
イワン・パーマー

米下院で「偽の選挙人」問題について宣誓供述を行った極右活動家で最高裁判事の妻ジニー・トーマス(9月29日) Evelyn Hockstein-REUTERS

<米議会襲撃事件の捜査も大詰めを迎え、トランプの起訴も取り沙汰されるなか、大統領選の勝敗を決する各州の選挙人になりすましてバイデン勝利を覆そうという大掛かりな「選挙泥棒」の試みが明らかになってきた。多くの大物の関与も明らかになっている>

ミシガン州の司法当局は7月18日、2020年の米大統領選でジョー・バイデンの勝利を覆すため、偽の選挙人名簿を作成し、連邦議会に送付した罪で、同州の共和党員16人を訴追したと発表した。この発表を受けて、ネット上では米連邦最高裁判所の保守派判事クラレンス・トーマスの妻、「ジニー」ことバージニーア・トーマスの訴追を求める声が高まっている。

 
 
 
 

ジニー・トーマスは「左派がアメリカを乗っ取る」ことに声高に警鐘を鳴らす極右活動家。ドナルド・トランプ前大統領の首席補佐官を務めたマーク・メドウズに宛てたテキストメッセージで、バイデンの勝利を「アメリカ史上最大の選挙泥棒」と呼び、選挙結果を覆す試みに手を貸すよう盛んに働きかけるなど、2021年1月6日に起きた連邦議会襲撃への関与も疑われている。

アリゾナ州の共和党員に偽の選挙人名簿を作成するよう働きかけた疑いも持たれている。州の選挙管理当局職員と州議会議員数十人に宛てたメールで、2020年の大統領選のアリゾナ州における勝者はトランプであると進んで宣言する「清く正しい選挙人の名簿」を作成することが「憲法上の義務」であると主張。「政治やメディアの圧力に屈せず、毅然として」信念を貫くよう呼びかけ、選挙人選びは「あなた方に、そしてあなた方だけに」与えられた責務である、などと同州の有権者の意思を無視する身勝手な理屈を述べ立てた。

「まんまと訴追を逃れた」

アリゾナ州に割り当てられた選挙人は11人。同州の本選ではバイデンが勝ったため、その11票はバイデンが獲得した。だがジニーの呼びかけが奏功したのか、同州共和党議長のケリー・ワードをはじめ共和党員11人は、連邦議会での正式承認を年明けに控えた2020年12月14日に密かに集まり、偽造の選挙人名簿を作成した疑いが持たれている。

(注)アメリカの大統領選では各州に割り当てられた選挙人を奪い合う方式。被告らは偽の選挙人になりすまし、バイデン勝利を覆そうとした疑い。トランプ陣営も深く関わっていたとされる。トランプ本人はまだ訴追されていないが、連邦検察は捜査を続けている。

ミシガン州と違ってまだ訴追には至っていないが、アリゾナ州のクリス・メイズ司法長官も共和党員による選挙人名簿の偽造疑惑について捜査を命じたと、ワシントン・ポストとNBCニュースが報じている。

今のところアリゾナ州当局の捜査ではジニーは取調べを受けていないようだが、本誌はソーシャルメディアを通じて本人に確認中だ。

連邦議会襲撃に関与した疑惑については、ネット上ではジニーは「まんまと訴追を逃れた」などと言われている。この事件の調査を行なった米下院特別委員会は昨年12月に発表した最終報告書で、「暴動の扇動・幇助」など4つの罪でトランプを刑事訴追するよう司法省に勧告したが、ジニーが果たした役割には触れなかった。彼女は同委員会の証人喚問でメドウズ宛のテキストメッセージついて聞かれ、「今となっては、できることなら全て取り消したい」と述べたと伝えられる。

国際移住者デー
すべての移住者とつくる共生社会のために──国連IOM駐日代表が語る世界と日本の「人の移動」
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米CPI、12月は前年比2.9%上昇に加速 インフ

ビジネス

TikTok、米での利用遮断を準備中 新法発効の1

ビジネス

独成長率、第4四半期速報0.1%減 循環・構造問題

ワールド

米国の新たな制裁、ロシアの石油供給を大幅抑制も=I
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    ド派手な激突シーンが話題に...ロシアの偵察ドローンを「撃墜」し、ウクライナに貢献した「まさかの生物」とは?
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    【随時更新】韓国ユン大統領を拘束 高位公職者犯罪…
  • 6
    中国自動車、ガソリン車は大幅減なのにEV販売は4割増…
  • 7
    「日本は中国より悪」──米クリフス、同業とUSスチ…
  • 8
    韓国の与党も野党も「法の支配」と民主主義を軽視し…
  • 9
    TikTokに代わりアメリカで1位に躍り出たアプリ「レ…
  • 10
    大麻は脳にどのような影響を及ぼすのか...? 高濃度の…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」
  • 4
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 5
    ロシア兵を「射殺」...相次ぐ北朝鮮兵の誤射 退却も…
  • 6
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「…
  • 7
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 8
    トランプさん、グリーンランドは地図ほど大きくない…
  • 9
    装甲車がロシア兵を轢く決定的瞬間...戦場での衝撃映…
  • 10
    古代エジプト人の愛した「媚薬」の正体
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中