住宅不足の香港、当局が若者向け「ホステル」補助金を拡大 反政府デモ招く原因の排除目指す?
「ヤングアダルト」と呼ばれる世代にとって、実家を離れることは1つの通過儀礼だ。だが、慢性的な住宅不足で悪名高い香港では、それが手の届かない夢であることも珍しくない。写真は香港青年連会が運営する施設「ビーリビング・ユース・ハブ」。3月撮影(2023年 ロイター/Lam Yik)
「ヤングアダルト」と呼ばれる世代にとって、実家を離れることは1つの通過儀礼だ。だが、慢性的な住宅不足で悪名高い香港では、それが手の届かない夢であることも珍しくない。
両親との口げんかにうんざりしていたヘアスタイリスト助手のシルバー・ホーさん(26)は、自分は運に恵まれた1人だと考えている。2カ月前、ホーさんは新たに設けられた「ユースホステル」に1室を得た。ヤングアダルト世代に居室を提供する施設で、香港政府からの補助金を受け、最長5年間借りることができる。
ホーさんの部屋は、22平方メートルのツインベッドルーム。もう1人とシェアする予定だが、両親と共に暮らしていた公営住宅の部屋に比べてわずかに狭いだけだ。
ホーさんが払う家賃はたったの月4400香港ドル(約7万9000円)で、近隣のサブディバイデッド・フラット(1つのアパートをさらに狭い部屋に分割した物件)と比べて27%も安い。そうした物件のパーティションで仕切られた部屋は、専用のトイレもなく、ベッド1つ置くのが精一杯という狭さであることが多い。
中国の習近平国家主席からのプレッシャーを受けて昨年強化された「ユースホステル」制度には、住宅問題を巡る若年世代の不満に対応する狙いがある。中国政府は、こうした不満が、2019年に香港を揺るがせた民主派による反政府抗議行動を招いた1つの要因だったと考えている。
また、政府が「責任ある善良な市民」を育て、自己鍛錬の機会を与えるという狙いもある。
応募にあたっては、31歳以下、月収2万5000香港ドル以下、そして資産総額が38万香港ドル以下、という条件があり、面接を受ける必要がある。さらに、入居を続けるためには、地域サービスまたは認定された活動に年200時間従事することが求められる。
ホーさんの場合、ホステル「ビーリビング」に部屋を確保したことは、両親からの独立と同時に、通勤時間の短縮を意味している。このホステルは新たな制度の下、ホテルから改装された初めてのもので、別の3カ所のホステルとは異なり、銅鑼湾(コーズウェイベイ)のにぎやかな商業地区という便利な立地である。
「以前よりもサロンに長くとどまって、新たなスキルを学んで練習する時間が増えた。これで昇進するチャンスも高まる」とホーさんは言う。