最新記事
注目ニュースを動画で解説

ブリンケン訪中で「格下」扱いされたアメリカ、それでも中国に低姿勢を貫くのはなぜ?【注目ニュースを動画で解説】

2023年7月7日(金)17時40分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
米中関係の救い難き悪化

Newsweek Japan-YouTube

<危険レベルまで緊張が高まっている米中関係。6月に訪中したブリンケン国務長官の成果と中国の反応、今後の見通しについて考察したアニメーション動画の内容を一部紹介する>

6月の訪中で露骨に冷遇されたアメリカだが、それでもバイデン政権には得たものがあったという。異様なまでの「外交非礼」を受けながらもアメリカが低姿勢を貫くのにはどんな理由があるのか──。

本記事では、本誌YouTubeチャンネルの動画「【米中関係】露骨に「格下」扱いされたアメリカが中国相手に低姿勢を貫く理由(アニメで解説)」の内容をダイジェスト的に紹介する。

◇ ◇ ◇

バイデン政権の閣僚として初めて中国を訪問したブリンケン国務長官だったが、北京国際空港で出迎えたのは少数の役人とニコラス・バーンズ駐中国アメリカ大使だけ。レッドカーペットすら用意されておらず、ネット上では、4月に訪中して盛大に歓迎されたフランスのマクロン大統領の時と大違いだという声も上がった。

nwyt0707_11.jpg

ブリンケンは2日間で秦剛(チン・カン)外相との密室協議、今も中国の外交政策を統括する王毅(ワン・イー)前外相との会談、そして習近平(シー・チンピン)国家主席との短時間の面会をこなした。しかし、この訪中は米中対立緩和の一歩とは言い難いものだった。

nwyt0707_2.jpg

軍事面で台湾への支援を拡大し、経済面で中国への締め付けを強化してきたバイデン政権のこれまでの対中政策を見れば、この結果も当然。対中圧力を高めつつ、緊張緩和を目指す外交戦略は明らかに矛盾している。

nwyt0707_4.jpg

この矛盾が物語っているのはバイデン大統領のジレンマだ。政界の対中強硬派はエンジン全開で中国脅威論を唱えており、彼らの存在を無視するわけにはいかない。かといって強硬路線一辺倒で進むのはあまりに危険だ。

バイデンが米中間の「責任ある競争管理」を掲げるのは、気候変動対策で協力したり、アメリカ企業を米中競争のとばっちりから守る必要もあるから。バイデンの対中政策を支持する有力議員らは、今回の訪中を緊張緩和に向けた重要な一歩と評価している。

nwyt230707_top2.jpg

実際、ブリンケンはわずかだが具体的な成果を持ち帰った。違法ドラッグの流入を防ぐための米中合同の作業部会を設置すること、人的つながりや学術交流の拡大、米中間の直行便の増便などだ。

しかし、中国在住アメリカ人の恣意的な拘束など最も重要な問題に関しては、目に見える進展はなかった。

nwyt0707_6.jpg

それ以上に問題なのは、軍同士の対話チャンネルの再開が実現しなかったことだ。米中激突のリスクがますます現実味を帯びている現在、偶発的な衝突が全面対決にエスカレートするのを防ぐために、このホットラインの存在は不可欠だ。

この提案を中国ははねつけた。

nwyt0707_7.jpg

アメリカ側が対話再開を求めているのは、それだけ両国間の緊張が高まっているから。今回のブリンケン訪中が外交上意義を持つかを占う重要な指標は、中国がアメリカと高官レベルの協議を続けるかどうかだ。

米政府は、11月にサンフランシスコで開催されるAPEC(アジア太平洋経済協力会議)サミットへの習の参加を実現させたいと考えている。

nwyt0707_9.jpg

■詳しくは動画をご覧ください。

試写会
カンヌ国際映画祭受賞作『聖なるイチジクの種』独占試写会 50名様ご招待
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 3
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 6
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 7
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 8
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 9
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 10
    強烈な炎を吐くウクライナ「新型ドローン兵器」、ロ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中