ロシア軍にもウクライナ軍にも加わる、ネパール「グルカ兵」...「イデオロギーとは無関係」な3つの理由とは?
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<公式ルートだけでなく、民間人の資格で外国の軍隊に加わるネパールの若者たち。外国部隊の「長い伝統」について>
ロシアのウクライナ侵攻開始からほぼ1カ月後、プラタップ・バスネトというネパール人の若者がウクライナのために戦っているという報道が同国内で注目を集めた。
ネパール外交の旗印は中立と非同盟だが、ウクライナ問題では欧米側に立ち、ロシアの軍事攻撃を批判していた。だが最近、ネパールの若者がロシア軍にも加わっている証拠が出てきた。
ロシア当局が5月16日、1年間の兵役契約を結べばロシア国籍の取得を容易にすると発表して以来、何百人ものネパールの若者が契約兵としてロシア軍に入隊した。なかにはネパール軍の元兵士もいる。
そのうちの1人は、退役後ドバイで警備員をしていたが、より魅力的な条件に引かれてロシアに向かった。観光客としてモスクワに入り、新兵募集センターで入隊したという。入隊基準が引き下げられたおかげだと、彼は通信アプリ「テレグラム」で筆者に言った。
「以前はロシア語の能力をチェックされたが、今は英語でもOKだ」
ロシア軍に参加するネパールの若者の人数について、公表されたデータはないが、彼らが民間人の身分で入隊していることは明らかだ。
ネパールには、正式なルートを通じてイギリスやインドに若者を兵士として送り込んできた長い伝統がある。「グルカ兵」としてイギリス軍に初めて加わったのは1815年。
インド独立後、グルカ兵はインド軍に引き継がれた。1949年以降はやはり旧宗主国イギリスとの縁で、シンガポール警察にも派遣された。
だが、それ以外の国に若者を外国の軍隊に派遣する2国間協定は結んでいない。国連平和維持軍(PKF)に参加する兵士の人数は世界第2位だが、国連以外の任務には軍隊を派遣していない。
中立を基本とするネパールの外交政策に反するからだと、プルナ・チャンドラ・タパ元国軍参謀総長は筆者に言った。だがネパールの若者は公式ルートだけでなく、民間人の資格で外国の軍隊に加わることもある。