最新記事

取り付け騒ぎ

プリゴジンの反乱でロシア人は1000億ルーブルを銀行から引き出した

Russians Scrambled for Cash Amid Fears of Putin's Ousting

2023年7月13日(木)18時06分
ジョン・ジャクソン

プリゴジンの武装反乱の前後3日で、ロシア人は1000億ルーブルを銀行から引き出した(写真は2017年)Tramp57-shutterstock

<ロシアのウクライナ侵攻以降、取り付け騒ぎが繰り返し起きているロシアだが、武装反乱でプーチンの座が危ないと思った預金者の反応は特別に大きかった>

<動画>ロシア国民にバレた...プリゴジンが暴いたプーチンの無力さ 「裸の王様」はもう限界?【注目ニュースを動画で解説】

ロシア連邦中央銀行が発表した数字によれば、民間軍事会社ワグネルが6月に武装反乱を起こした前後のわずか数日で、ロシア国民は、銀行から1000億ルーブル(約11億ドル、約1525億円)を引き出したようだ。

モスクワ・タイムズは、ロシア連邦中央銀行が7月12日に発表した月例金融政策報告書の内容として、6月23日〜25日に、ロシアの銀行から1000億ルーブルが引き出されたと報じている。これは、ワグネルの創設者エフゲニー・プリゴジンが反乱を起こした期間と大まかに重なる。

プリゴジンは6月23日、ロシア軍がミサイル攻撃でワグネルの兵士約30人を殺害したと主張し、自身の兵士に首都モスクワへの進軍を命じたが、翌24日、反乱は終結した。ベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領が和平を仲介したと言われる。

迅速な解決にもかかわらず、この一件は、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の権力に対する最も重大な挑戦だと見る向きもある。

ロシア経済誌RBCは、ワグネルの反乱中に起きた預金引き出しは、ロシアが2022年9月にウクライナ戦争への部分動員を発表して以来、「現金需要の最も顕著な急増」だったと報じている。

ルーブルは15カ月ぶりの安値

ロシア連邦中央銀行は、6月の1カ月間で5000億ルーブル(約55億ドル、約7625億円)が国内の銀行から引き出され、そのうちの5分の1が、ワグネルの反乱が起きた23〜25日に引き出されたと報告している。

ロシア連邦中央銀行は、このような現金流通量の増加が金融政策に影響を与えることはないと述べた、とRBCは伝えている。

反乱が早期に収束したにもかかわらず、多くのエコノミストは、ルーブルが7月6日に1ドル=93ルーブルという15カ月ぶりの安値を付けたのは少なくとも部分的にはワグネルのせいだとしている。

2022年2月にロシアがウクライナへの侵攻を開始して以来、ルーブルの価値は下落傾向だった。ロシア連邦議会のアナトリー・アクサコフ下院議員は7月6日、ここへきてのルーブルの急落は、2022年秋にロシアが違法に併合したウクライナ4州への資金供給が一因だという見解を示した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米・イランが間接協議、域内情勢のエスカレーション回

ワールド

ベトナム共産党、国家主席にラム公安相指名 国会議長

ワールド

サウジ皇太子と米大統領補佐官、二国間協定やガザ問題

ワールド

ジョージア「スパイ法案」、大統領が拒否権発動
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 7

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 8

    「裸に安全ピンだけ」の衝撃...マイリー・サイラスの…

  • 9

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 8

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 9

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中