プリゴジンの乱を収めたベラルーシのルカシェンコ、存在感強める ワグネル傭兵らを迎え入れプーチンへの切り札に?
ベラルーシのルカシェンコ大統領(写真)は、ロシアのプーチン大統領に感謝するかお願いする立場が続いた。ミンスクで同日撮影。ベラルーシ大統領府提供(2023年 ロイター)
ベラルーシのルカシェンコ大統領は、ロシアのプーチン大統領に感謝するかお願いする立場が続いた。資金の借り入れから安価な天然ガス供給、国内の反政府活動への対応、戦術核配備の問題にいたるまで、その対象は広範だった。
ところが、ロシア民間軍事会社ワグネルの武装反乱を巡り、その立場は180度入れ替わった。
ワグネル創設者のエフゲニー・プリゴジン氏が起こした反乱を収める上で、ルカシェンコ氏が果たした役割の全貌はまだ分かっていない。それでも、ロシア政府の高官たちから利用価値はあるが変わり身が速く、何かと要求が多いとしてずっと軽視されてきたルカシェンコ氏は今、ロシアで非常に丁重に扱われつつある。
ルカシェンコ氏本人やプーチン氏の話では、下手をするとロシアの体制転換につながってもおかしくなかったワグネルの反乱を終わらせた主役の1人こそが、ルカシェンコ氏だった。
ルカシェンコ氏本人の説明によれば、プリゴジン氏には電話で長時間にわたって反乱をやめるよう説得を続け、プーチン氏には急いで行動しないよう助言。プリゴジン氏に対しては「(モスクワへの)道半ばで虫けらのようにつぶされてしまうぞ」と警告し、翻意を促したという。
ルカシェンコ氏のこうした「功績」の見返りとして、ロシア側が従来以上に何をベラルーシに提供できるのか、まだ、はっきりしない。
ただ、ルカシェンコ氏は最も控えめに言っても、今回の件でロシアの同氏に対する政治的信用を高める成果を手にしたことになり、必要な時期にこの信用を利用して金融・経済面でロシア側からさらなる支援を引き出せる。
実際、ルカシェンコ氏の政敵らは、ワグネルの反乱を抑えた行動は、全て保身が動機だったのだろうとの見方をしている。同氏は「欧州最後の独裁者」として1994年以降ベラルーシを統治し、政敵の多くを投獄したり国外脱出に追いやったりしてきた。
ベラルーシ反体制派指導者で隣国リトアニアに逃れたスベトラーナ・チハノフスカヤ氏はツイッターに「プーチン氏の支えがなければ、ルカシェンコ氏の体制は生き残れない」と書き込んだ。