最新記事
欧州

プリゴジンの乱を収めたベラルーシのルカシェンコ、存在感強める ワグネル傭兵らを迎え入れプーチンへの切り札に?

2023年6月28日(水)19時10分
ロイター
ベラルーシのルカシェンコ大統領

ベラルーシのルカシェンコ大統領(写真)は、ロシアのプーチン大統領に感謝するかお願いする立場が続いた。ミンスクで同日撮影。ベラルーシ大統領府提供(2023年 ロイター)

ベラルーシのルカシェンコ大統領は、ロシアのプーチン大統領に感謝するかお願いする立場が続いた。資金の借り入れから安価な天然ガス供給、国内の反政府活動への対応、戦術核配備の問題にいたるまで、その対象は広範だった。

ところが、ロシア民間軍事会社ワグネルの武装反乱を巡り、その立場は180度入れ替わった。

ワグネル創設者のエフゲニー・プリゴジン氏が起こした反乱を収める上で、ルカシェンコ氏が果たした役割の全貌はまだ分かっていない。それでも、ロシア政府の高官たちから利用価値はあるが変わり身が速く、何かと要求が多いとしてずっと軽視されてきたルカシェンコ氏は今、ロシアで非常に丁重に扱われつつある。

ルカシェンコ氏本人やプーチン氏の話では、下手をするとロシアの体制転換につながってもおかしくなかったワグネルの反乱を終わらせた主役の1人こそが、ルカシェンコ氏だった。

ルカシェンコ氏本人の説明によれば、プリゴジン氏には電話で長時間にわたって反乱をやめるよう説得を続け、プーチン氏には急いで行動しないよう助言。プリゴジン氏に対しては「(モスクワへの)道半ばで虫けらのようにつぶされてしまうぞ」と警告し、翻意を促したという。

ルカシェンコ氏のこうした「功績」の見返りとして、ロシア側が従来以上に何をベラルーシに提供できるのか、まだ、はっきりしない。

ただ、ルカシェンコ氏は最も控えめに言っても、今回の件でロシアの同氏に対する政治的信用を高める成果を手にしたことになり、必要な時期にこの信用を利用して金融・経済面でロシア側からさらなる支援を引き出せる。

実際、ルカシェンコ氏の政敵らは、ワグネルの反乱を抑えた行動は、全て保身が動機だったのだろうとの見方をしている。同氏は「欧州最後の独裁者」として1994年以降ベラルーシを統治し、政敵の多くを投獄したり国外脱出に追いやったりしてきた。

ベラルーシ反体制派指導者で隣国リトアニアに逃れたスベトラーナ・チハノフスカヤ氏はツイッターに「プーチン氏の支えがなければ、ルカシェンコ氏の体制は生き残れない」と書き込んだ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

フジ・メディアHD、業績下方修正 フジテレビの広告

ビジネス

武田薬、通期の営業益3440億円に上方修正 市場予

ビジネス

ドイツ銀行、第4四半期は予想以上の減益 コスト削減

ビジネス

キヤノン、メディカル事業で1651億円減損 前12
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ革命
特集:トランプ革命
2025年2月 4日号(1/28発売)

大統領令で前政権の政策を次々覆すトランプの「常識の革命」で世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 3
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? 専門家たちの見解
  • 4
    トランプのウクライナ戦争終結案、リーク情報が本当…
  • 5
    緑茶が「脳の健康」を守る可能性【最新研究】
  • 6
    東京23区内でも所得格差と学力格差の相関関係は明らか
  • 7
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 8
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 9
    ピークアウトする中国経済...「借金取り」に転じた「…
  • 10
    フジテレビ局員の「公益通報」だったのか...スポーツ…
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果が異なる【最新研究】
  • 4
    日鉄「逆転勝利」のチャンスはここにあり――アメリカ…
  • 5
    緑茶が「脳の健康」を守る可能性【最新研究】
  • 6
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵…
  • 7
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 8
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 9
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 10
    煩雑で高額で遅延だらけのイギリス列車に見切り...鉄…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 6
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 7
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 8
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 9
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 10
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中