前提として中国への敬意が必要...「上から目線」な新任国防相が演説、安全保障構造を構築するための4提案とは?
CHINA’S SECURITY VISION
2つ目に、中国は「より公正な安全保障の規則を推し進める」考えだと李は述べた。
これに先立ち、彼は規則に基づく国際秩序を掲げている「どこかの国」(つまりアメリカ)が「規則の具体的な内容や誰がそれを決めたのかを明かさない」ことに不満を述べていた。李はまた、規則が全ての国に平等に適用されない「例外主義」と「二重基準」も批判。中国は「安全保障の規則」に関する新たなビジョンを推し進めることで、これらの懸念に対処していくと述べた。
その一方、中国は既存の秩序を全て覆したいわけではないとも強調した。また「宇宙、サイバー空間、バイオセキュリティーなどの新興分野(まだ確固たる国際的な規則や規範が存在しない分野だ)での規則作りを検討」していきたいと述べた。
3つ目に李が述べたのは、中国として「多国間安全保障メカニズムの改善」を目指すという考えだ。その具体例として彼が言及したのが、アジア信頼醸成措置会議(CICA)と上海協力機構(SCO)だ。だがどちらのグループにおいても、多国間安全保障協力はまだ初期段階にある。それは李も承知で、「制度構築」は今後の課題だと述べた。
最善の方法は「近づくな」
4つ目の点は、中国が合同軍事演習などを通じて「より効果的な防衛・安全保障面の協力を進めていく」ということ。ここで李が特に強調したのは、中国が「対テロ、海洋安全保障とHADR(人道支援および災害救援)」を含む「非伝統的な安全保障上の課題」に対処する能力の構築に重点を置いている点だ。
これらの具体的な提案内容を見ると、中国とアメリカの見解にはかなりの共通点があることが分かる。
ジョー・バイデン米大統領は、米中対立のさらなる悪化を防ぐための「ガードレール」の設定をたびたび呼びかけてきた。その内容は李の提案ととてもよく似ており、対話と信頼構築措置、サイバー空間のような新興分野でのルール作りに関する交渉や、多国間フォーラムへの積極的な関与などだ。
問題は、李が一連の提案を長ったらしい攻撃的な批判の中に埋もれさせてしまったこと。そしてニュースでは、前半の批判の部分ばかりが取り沙汰されたことだ。このことは、信頼構築や新興分野でのルール作りに関する交渉の取り組みにとって逆効果となるだろう。