反攻ウクライナ「夏の終わりまでにクリミア奪還も可能」──米軍元司令官
Ukraine Could Free Crimea by End of Summer: Ex-U.S. General
韓国から日本海に向けて発射された米軍のATACMS(2017年) 8th United States Army/ REUTERS
<クリミアを奪還して軍港セバストポリに長距離兵器ATACMSを配備すれば、ロシアの黒海艦隊は黒海を出ていき2度と戻ってこれなくなると、米軍元司令官は言う>
ウクライナ軍は、西側の十分な軍事支援さえあれば、夏の終わりまでにはロシアの前線を突破してクリミア半島に到達する可能性がある――米軍の元欧州軍司令官ベン・ホッジスは本誌にこう見通しを示した。
6月前半にウクライナの南部と東部で始まった反転攻勢については、進展が遅く、ウクライナ側に多大な犠牲が出ていることが懸念されている。ホッジスは、ジョー・バイデン米政権に対し、「MGM140米陸軍戦術ミサイルシステム(一般にATACMSとして知られる)」のような長距離兵器を供与して、ウクライナの勝利を確実にするために尽力する姿勢を示すよう呼びかけた。バイデン政権はこれまで、ロシアによる報復を誘発するおそれがあるとして、これらの兵器を供与しない方針を貫いてきた。
ホッジスはインタビューの中で、ウクライナ軍による反転攻勢の進捗と今後の見通しについて、「アメリカが必要な支援を提供すれば、ウクライナが夏の終わりまでにクリミアを奪還できる可能性はあるという考えは変わらない」と述べた。
反転攻勢はうまくいく
ウクライナ政府は、6月に入って反転攻勢を開始して以降、複数の方面で重要な進展を達成したと報告している。最も激しい戦闘が展開されているのは東部ドネツク州の激戦地バフムト周辺と、南部ザポリージャ州の前線だ。ほかにも、ウクライナとロシアの約1280キロメートルに及ぶ「国境」沿いでいくつも戦闘が続いており、北東部ルハンスク州ではロシア軍が攻勢に出ていると報じられている。
ウクライナの当局者らは、敵や敵の武器の位置を知る威力偵察を目的とした初期の攻撃は困難を伴ったが成果もあり、ウクライナ軍はロシア軍が長期にわたって備えを進めてきた防衛線に食い込んでいると主張。一方でロシア政府は、ウクライナ軍による反転攻勢を撃退し、ウクライナ軍の兵士と設備に多大な損失をもたらしていると主張し続けている。
ホッジスは、ウクライナの反転攻勢の成功や失敗について評価を下すのはまだ早いと述べ、ウクライナ軍の今後の見通しについて楽観的な見方を変えていないと強調した。