「多様性」「持続可能性」を促進...F1ステファノ・ドメニカリCEOに聞く、若い新規ファンの獲得戦略

DRIVE TO WIN

2023年6月22日(木)15時30分
ポール・ローズ(ジャーナリスト)
F1グループのCEOステファノ・ドメニカリ

F1グループのCEOステファノ・ドメニカリ AlessioDeMarco-Shutterstock

<脱炭素、多様性、エンタメ化......時代の変化を捉えモデルチェンジに挑むF1は肥沃なアメリカ市場を狙う>

今年で2度目の開催となったF1マイアミGP(グランプリ)、5月7日の決勝で勝利のチェッカーフラッグを受けたのはレッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペンだった。しかし、真の勝者は運営母体F1グループのCEOステファノ・ドメニカリと、7年前に44億ドルでF1を買収した米企業リバティメディア(本社コロラド州)だろう。

なぜか。ヨーロッパ中心だったF1が、今はアメリカで若い(そしてリッチな)ファンを増やしているからだ。SNSを駆使した情報の拡散とネットフリックスの連続ドキュメンタリー『栄光のグランプリ』の人気、そして「ウォーク(社会の不公正や差別に対する意識が高い)」なイメージ戦略のおかげだ。その一方、表彰式では盛大にシャンパンをかけまくるし、観客席には世界中のセレブが勢ぞろい。しかも大金が動く(現役最強ドライバーのフェルスタッペンの今季の年俸は約5000万ユーロとされる)のだから、若い世代が食い付くのも無理はない。

【動画】ドキュメンタリー『栄光のグランプリ』予告編

「初めてF1を見るファンのハートをがっちりつかみたい」。マイアミGPで訪米したドメニカリは本誌にそう語った。「エキサイティングなレースを体で感じでほしいし、レースを支えるスタッフの熱意と技術も知ってほしい」

F1の主戦場は今もヨーロッパだが、米リバティメディアが経営権を握ったこともあり、アメリカ勢も相次いで名乗りを上げている。工作機械大手のハースは2016年から参戦しているし、フォードは26年以降、レッドブルにエンジンを供給する予定。またアンドレッティ・グローバルはGMと組んで、キャデラック名義での参戦を表明している。

アメリカ人としては15年以来となるF1ドライバーも誕生した。フロリダ州出身で22歳のローガン・サージェントだ。「地元で走れるのはいいよね」と、マイアミGPに臨むサージェントは言った。「アメリカ代表って立場だから、もちろん名誉なことだ。それに自分はここマイアミで自動車レースを始め、ついにF1でここに戻って来られた。これって、すごく特別だ」

マリオ・アンドレッティが1978年シーズンにアメリカ人として2人目の総合優勝を果たして以来、アメリカでF1人気がこれほど高まったことはない。22年にESPN系列でF1を視聴した人の数は、1レース当たり平均120万人と記録的な数に上った。この年のアメリカGP(テキサス州オースティン)に詰めかけたファンの数は約40万人で、F1レース史上最大だった。

230627p18_F1H_03.jpg

生ける伝説マリオ・アンドレッティ1978年の雄姿 BETTMANN/GETTY IMAGES

社会的価値創造
「子どもの体験格差」解消を目指して──SMBCグループが推進する、従来の金融ビジネスに留まらない取り組み「シャカカチ」とは?
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米ミシガン大消費者信頼感11月確報値、71.8に上

ワールド

レバノン南部で医療従事者5人死亡、国連基地への攻撃

ビジネス

物価安定が最重要、必要ならマイナス金利復活も=スイ

ワールド

トランプ氏への量刑言い渡し延期、米NY地裁 不倫口
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでいない」の証言...「不都合な真実」見てしまった軍人の運命
  • 4
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 5
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 6
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 7
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 8
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 9
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 10
    巨大隕石の衝突が「生命を進化」させた? 地球史初期…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 6
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 9
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 10
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中