「多様性」「持続可能性」を促進...F1ステファノ・ドメニカリCEOに聞く、若い新規ファンの獲得戦略
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また主催者側の発表によれば、21年にはフェイスブックやツイッター、インスタグラム、さらに中国系のプラットフォームを合わせると、F1のフォロワー数は合計で4910万人に達し、翌22年にはさらに23%も増えている。過去4年間に各種SNSでのフォロワー数をこれほど増やしたプロのスポーツ団体はほかにない。リバティメディアがF1を買収した当時は8%だった女性ファンの割合も、今や40%前後だ。
持続可能性や多様性を促進
こうしたファンの力で、F1グループの総収入は22年実績で26億ドル(前年は21億ドル)に達した。営業利益は21年の4000万ドルから4倍以上の1億7300万ドルに膨らんだ。ファンの関心と収入の両方が増大したことで、F1の事業価値は今や170億ドル弱と見積もられる。
だが、まだドメニカリは満足していない。彼は本誌との単独インタビューで、F1選手権の開催地をさらに広げたい意向を示した。多様性の向上と女性の参加拡大にも尽力し、エンジンなどの改良で30年までにカーボンニュートラル(二酸化炭素の排出量実質ゼロ)を実現したいとも熱く語った。
ドメニカリはイタリア人で現在は58歳。だがモータースポーツへの情熱を語るときの彼は少年のように熱く、直線コースを疾走するレーサーのように猛スピードになる。裕福な銀行家の息子で、出身地はエミリア・ロマーニャ州のイモラ。そう、モナコと並ぶF1グランプリの開催地だ。フェラーリの本拠地であり、フェラーリがコンストラクター部門で総合優勝を果たした08年にはドメニカリがチームの代表を務めていた。ランボルギーニの本拠地も同州にあり、彼は16年から20年まで同社のCEOを務め、翌21年にF1グループに移籍した。
「私の人生は常に自動車とモータースポーツと共にある」とドメニカリは言う(スキーと飛行機も好きだ)。「子供の頃からレースを見ていた。高校時代にはレース場でアルバイトをした。そうすれば全てのレースを見られるからだ。ボローニャの大学を卒業して、フェラーリに入社したのが26歳のとき。そこから本格的に自動車の旅が始まった」
本誌とのインタビューで、ドメニカリは「スピード」や「エキサイトメント」「エンターテインメント」「アドレナリン」など、いかにもスポーツの興行主らしい単語を連発した。しかし意外や意外、「多様性」や「インクルージョン(包摂)」「持続可能性」、そして企業の「社会的責任」といった言葉も繰り返し口にした。