「多様性」「持続可能性」を促進...F1ステファノ・ドメニカリCEOに聞く、若い新規ファンの獲得戦略

DRIVE TO WIN

2023年6月22日(木)15時30分
ポール・ローズ(ジャーナリスト)

また主催者側の発表によれば、21年にはフェイスブックやツイッター、インスタグラム、さらに中国系のプラットフォームを合わせると、F1のフォロワー数は合計で4910万人に達し、翌22年にはさらに23%も増えている。過去4年間に各種SNSでのフォロワー数をこれほど増やしたプロのスポーツ団体はほかにない。リバティメディアがF1を買収した当時は8%だった女性ファンの割合も、今や40%前後だ。

持続可能性や多様性を促進

230627p18_F1H_04.jpg

1975年に初入賞した女性レラ・ロンバルディ KEYSTONEーHULTON ARCHIVE/GETTY IMAGES

こうしたファンの力で、F1グループの総収入は22年実績で26億ドル(前年は21億ドル)に達した。営業利益は21年の4000万ドルから4倍以上の1億7300万ドルに膨らんだ。ファンの関心と収入の両方が増大したことで、F1の事業価値は今や170億ドル弱と見積もられる。

だが、まだドメニカリは満足していない。彼は本誌との単独インタビューで、F1選手権の開催地をさらに広げたい意向を示した。多様性の向上と女性の参加拡大にも尽力し、エンジンなどの改良で30年までにカーボンニュートラル(二酸化炭素の排出量実質ゼロ)を実現したいとも熱く語った。

ドメニカリはイタリア人で現在は58歳。だがモータースポーツへの情熱を語るときの彼は少年のように熱く、直線コースを疾走するレーサーのように猛スピードになる。裕福な銀行家の息子で、出身地はエミリア・ロマーニャ州のイモラ。そう、モナコと並ぶF1グランプリの開催地だ。フェラーリの本拠地であり、フェラーリがコンストラクター部門で総合優勝を果たした08年にはドメニカリがチームの代表を務めていた。ランボルギーニの本拠地も同州にあり、彼は16年から20年まで同社のCEOを務め、翌21年にF1グループに移籍した。

「私の人生は常に自動車とモータースポーツと共にある」とドメニカリは言う(スキーと飛行機も好きだ)。「子供の頃からレースを見ていた。高校時代にはレース場でアルバイトをした。そうすれば全てのレースを見られるからだ。ボローニャの大学を卒業して、フェラーリに入社したのが26歳のとき。そこから本格的に自動車の旅が始まった」

本誌とのインタビューで、ドメニカリは「スピード」や「エキサイトメント」「エンターテインメント」「アドレナリン」など、いかにもスポーツの興行主らしい単語を連発した。しかし意外や意外、「多様性」や「インクルージョン(包摂)」「持続可能性」、そして企業の「社会的責任」といった言葉も繰り返し口にした。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

実質消費支出5月は前年比+4.7%、2カ月ぶり増 

ビジネス

ドイツ、成長軌道への復帰が最優先課題=クリングバイ

ワールド

米農場の移民労働者、トランプ氏が滞在容認

ビジネス

中国、太陽光発電業界の低価格競争を抑制へ 旧式生産
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 4
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 5
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 6
    ワニに襲われた直後の「現場映像」に緊張走る...捜索…
  • 7
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 8
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた…
  • 9
    吉野家がぶちあげた「ラーメンで世界一」は茨の道だ…
  • 10
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 3
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 4
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 5
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 6
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギ…
  • 7
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 8
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 9
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 10
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 7
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 8
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 9
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 10
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中