「多様性」「持続可能性」を促進...F1ステファノ・ドメニカリCEOに聞く、若い新規ファンの獲得戦略
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ドメニカリは、F1全体の二酸化炭素排出量を30年までに最低でも50%削減する計画「ネットゼロ2030」に取り組んでいる。
この目標を達成するために最も重視しているのは、世界各地を転戦する主催者と参加チームの機材や人員の総量を減らすことだ。F1グループの環境報告書によれば、18年実績でF1全体の二酸化炭素排出量は25万6551トンで、内訳は移動・物流部門が約73%、施設・工場が約20%、レース運営部門が7%強とされる。またオフィスやレース場での再生可能エネルギーの利用などで、21年には排出量を17%削減できたという。
既にエンジンは電動ハイブリッドに転換しているが、サウジアラビアの国営石油会社アラムコなどの協力を得て、合成燃料の「eフュエル」を導入する計画も進んでいる(ただし現状でも、レース用車両の排出する二酸化炭素はF1グループ全体の1%に満たないという)。
eフュエルは水素と二酸化炭素を工業的プロセスで結合させたもので、二酸化炭素排出量を実質ゼロにできる。ドメニカリによれば、eフュエルはF1だけでなく航空機や船舶の燃料にも使えるし、もちろん一般の乗用車や商用車にも使える。また自動車用ハイブリッドエンジンの改良には、F1で培われた技術が大きく貢献してきた。ただし現状のeフュエルは値段が高すぎて一般の利用には向かないという。
それでも「私たちは持続可能性を非常に重視している」とドメニカリは言う。「26年シーズンから持続可能な燃料を混ぜて使うことは既定路線だ。30年のカーボンニュートラル達成にも懸命に努力している」
F1だけではない。他のスポーツ団体、例えばバスケットボールのNBAも30年までに排出量を半減させ、40年にはネットゼロ(実質ゼロ)を実現するとしている。
ただし「ネットゼロ」は曲者だ。いわゆる「カーボンクレジット」の利用が含まれるからだ。カーボンクレジットは、植林や湿地帯の再生などを通じて大気中から吸収する二酸化炭素の量を増やす各種プロジェクトに資金を提供し、それによって自社の排出量を相殺する仕組みだ。しかし、こうしたプロジェクトの有効性には疑問符が付く。
だからF1のESG(環境・社会・企業統治)担当者エレン・ジョーンズも、まずは自らの排出量削減に取り組んでいると強調する。ただし「どうしても削減できない分についてはクレジットによる相殺も検討せざるを得ない」と言う。