「多様性」「持続可能性」を促進...F1ステファノ・ドメニカリCEOに聞く、若い新規ファンの獲得戦略

DRIVE TO WIN

2023年6月22日(木)15時30分
ポール・ローズ(ジャーナリスト)

230627p18_F1H_05.jpg

スペインGPでピットインするカルロス・サインツ DAN ISTITENEーFORMULA 1/GETTY IMAGES

ドメニカリは、F1全体の二酸化炭素排出量を30年までに最低でも50%削減する計画「ネットゼロ2030」に取り組んでいる。

この目標を達成するために最も重視しているのは、世界各地を転戦する主催者と参加チームの機材や人員の総量を減らすことだ。F1グループの環境報告書によれば、18年実績でF1全体の二酸化炭素排出量は25万6551トンで、内訳は移動・物流部門が約73%、施設・工場が約20%、レース運営部門が7%強とされる。またオフィスやレース場での再生可能エネルギーの利用などで、21年には排出量を17%削減できたという。

既にエンジンは電動ハイブリッドに転換しているが、サウジアラビアの国営石油会社アラムコなどの協力を得て、合成燃料の「eフュエル」を導入する計画も進んでいる(ただし現状でも、レース用車両の排出する二酸化炭素はF1グループ全体の1%に満たないという)。

eフュエルは水素と二酸化炭素を工業的プロセスで結合させたもので、二酸化炭素排出量を実質ゼロにできる。ドメニカリによれば、eフュエルはF1だけでなく航空機や船舶の燃料にも使えるし、もちろん一般の乗用車や商用車にも使える。また自動車用ハイブリッドエンジンの改良には、F1で培われた技術が大きく貢献してきた。ただし現状のeフュエルは値段が高すぎて一般の利用には向かないという。

それでも「私たちは持続可能性を非常に重視している」とドメニカリは言う。「26年シーズンから持続可能な燃料を混ぜて使うことは既定路線だ。30年のカーボンニュートラル達成にも懸命に努力している」

F1だけではない。他のスポーツ団体、例えばバスケットボールのNBAも30年までに排出量を半減させ、40年にはネットゼロ(実質ゼロ)を実現するとしている。

ただし「ネットゼロ」は曲者だ。いわゆる「カーボンクレジット」の利用が含まれるからだ。カーボンクレジットは、植林や湿地帯の再生などを通じて大気中から吸収する二酸化炭素の量を増やす各種プロジェクトに資金を提供し、それによって自社の排出量を相殺する仕組みだ。しかし、こうしたプロジェクトの有効性には疑問符が付く。

だからF1のESG(環境・社会・企業統治)担当者エレン・ジョーンズも、まずは自らの排出量削減に取り組んでいると強調する。ただし「どうしても削減できない分についてはクレジットによる相殺も検討せざるを得ない」と言う。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ミネソタ州に兵士1500人派遣も、国防総省が準備命

ワールド

EUとメルコスルがFTAに署名、25年間にわたる交

ワールド

トランプ氏、各国に10億ドル拠出要求 新国際機関構

ワールド

米政権、ベネズエラ内相と接触 マドゥロ氏拘束前から
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
2026年1月20日号(1/14発売)

深夜の精密攻撃でマドゥロ大統領拘束に成功したトランプ米大統領の本当の狙いは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向」語る中、途方に暮れる個人旅行者たち
  • 2
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰に地政学リスク、その圧倒的な強みとは?
  • 3
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の船が明かす、古代の人々の「超技術」
  • 4
    世界最大の埋蔵量でも「儲からない」? 米石油大手が…
  • 5
    中国のインフラ建設にインドが反発、ヒマラヤ奥地で…
  • 6
    DNAが「全て」ではなかった...親の「後天的な特徴」…
  • 7
    シャーロット英王女、「カリスマ的な貫禄」を見せつ…
  • 8
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世…
  • 9
    鉛筆やフォークを持てない、1人でトイレにも行けない…
  • 10
    AIがついに人類に「牙をむいた」...中国系組織の「サ…
  • 1
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率が低い」のはどこ?
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 3
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世界一危険」な理由
  • 4
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 5
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試…
  • 6
    正気を失った?──トランプ、エプスタイン疑惑につい…
  • 7
    母親が発見した「指先の謎の痣」が、1歳児の命を救っ…
  • 8
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 9
    「高額すぎる...」ポケモンとレゴのコラボ商品に広が…
  • 10
    中国が投稿したアメリカをラップで風刺するAI動画を…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中