行くも戻るも地獄...アメリカは「貧者の道」
U.S. Border Chaos
不法入国で刑事罰の恐れ
しかし多くの人が申請を却下される恐れがあり、米自由人権協会(ACLU)などは訴訟で対抗する構えだ。
タイトル42の下では、国境での難民申請はほぼ完全に却下された。しかし、不法入国を何度も試みたというだけで罰されることはなかった。
だが今後は不法入国の試みが刑事罰の対象となり、5~20年間は新たな難民申請が不可能になる恐れがある。手段を選ばず国境を越えれば勝ち、というわけにはいかない。
バイデン政権は新たな施策を移民支援の一環と位置付け、不法移民の生じる根本原因の解消に取り組むとしている。まずはコロンビアとグアテマラに専門の事務所を開設し、そこで事前に合法的な入国を申請できるようにするという。最初は2カ所だが、順次増設する計画だ。
だが計画は遅れている。だから当面は「非常に難しい状況になり得る」と、国土安全保障省も認めている。「結果を出したいが、結果が出るまでには時間がかかる」
ダリエン地峡を越えてパナマ領内に入った人のほとんどは、メテティという町で一息つく。そこでは、タイトル42が失効すれば難民申請のチャンスが増えるという噂も流れていた。
国連によると、昨年はダリエン地峡を渡る人が過去最多の25万人弱に達した。今年は40万人になる可能性があるという。今さら引き返せないし、新規則の詳細が分かるのを待ってはいられないからだ。
だが難民申請の機会が減るのは間違いない。国境まで到達すれば誰でも難民申請の面接を受けられるという常識は、もう通用しなくなる。
CBPの入国手続きアプリを使えば、簡単に面接を予約できるとされる。実際、それで救われた人も多い。だが苦情も噴出している。
「使えない」とぼやくのはナイジェリアから来たアブドルラーマン・スレイマン・オライデ(31)。スマホでアプリを開こうとしても、毎回フリーズしてしまうという。
彼はブラジルで働いていたが、アメリカには親類が住んでいる。だからダリエン地峡を越えて来た。でもアプリが使えなければ、面接の予約もできない。