最新記事
アメリカ社会

行くも戻るも地獄...アメリカは「貧者の道」

U.S. Border Chaos

2023年6月8日(木)15時55分
ニック・アスピンウォール(ジャーナリスト)

ダリエン地峡を閉鎖へ

メテティには2カ所に移民の待機センターがある。身を寄せた人の多くが道中で強盗の被害に遭い、身ぐるみ剝がれ、渡航書類も持っていない。

コロンビア軍の将校だったカミーロ・マカナ(54)は、反体制武装組織FARCの分派から殺害の脅迫を受け、移住を決意した。だがダリエン地峡でコロンビア人の盗賊に襲われ、全てを奪われた。

「パスポートがないから外に出られない。バス代もない。これではパスポート(の再発行)も手配できない」

バイデン政権は4月、ダリエン地峡を渡る主要なルートを閉鎖するため、コロンビアとパナマの軍隊と協力すると表明した。共同発表によると、2カ月にわたって仲介業者などを取り締まる作戦を展開する。別に安全なルートを用意する計画もあるという。

ベネズエラのマドゥロ政権に反対する活動家でジャーナリストのオメル・アレハンドロ・バリオス・チャコン(37)は6年前、コロンビアに脱出した。

しかし昨年のコロンビア大統領選で勝利したグスタボ・ペトロがベネズエラとの国交再開を決めたので、別の国へ移ることにした。

しかしチャコンと妻はダリエン地峡で強盗に襲われた。2人はパナマにとどまり、この国で亡命を申請するという。「ベネズエラ政府が絶対に手を出せない」アメリカに移住するのが夢だが、今は「命を守れる国ならどこでもいい」とチャコンは言う。

新しい規則を適用しても、ダリエン地峡を渡る人の流れが止まるとは思えない。それはアメリカ政府も認めている。弱い立場の移民を狙う強盗や暴力犯罪、性的暴行などを防ぐ手段もない。

チャコンも、そして冒頭に引いたタルキも、仲介業者に大金を払う代わりに危険なルートを選んでダリエン地峡を越え、パナマまで来た。でも、まだ終わりではない。

「長くて厳しく危険な道だ」とチャコンは言う。「貧者の道さ」

From Foreign Policy Magazine

ニューズウィーク日本版 教養としてのミュージカル入門
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2026年3月17号(3月10日発売)は「教養としてのミュージカル入門」特集。社会と時代を鮮烈に描き出すポリティカルな作品の魅力[PLUS]山崎育三郎ロングインタビュー

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら



あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

英、ホルムズ海峡の商船保護巡り独・伊と協議 緊密な

ワールド

イスラエル外相「終わりなき戦争望まず」、終結時期は

ワールド

米国防長官、イラン攻撃「最も激しい日に」 最多の戦

ワールド

イランの「黒い雨」、WHOが健康被害を警告 
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのミュージカル入門
特集:教養としてのミュージカル入門
2026年3月17日号(3/10発売)

社会と時代を鮮烈に描き出すミュージカル。意外にポリティカルなエンタメの「魔力」を学ぶ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開された皇太子夫妻の写真が話題に
  • 4
    「一日中見てられる...」元プロゴルファー女性の「目…
  • 5
    40年以上ぶり...イスラエル戦闘機「F-35I」が、イラ…
  • 6
    人間ダンサーを連れて「圧巻のパフォーマンス」...こ…
  • 7
    身長や外見も審査され、軍隊並みの訓練を受ける...中…
  • 8
    ホルムズ海峡封鎖、石油危機より怖い「肥料ショック」
  • 9
    トランプも無視できない? イランで浮上した「危機管…
  • 10
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで続くのか
  • 4
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 6
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 7
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 8
    日本の保護者は自分と同じ「大卒」の教員に敬意を示…
  • 9
    中国はイランを見捨てた? イランの「同盟国」だっ…
  • 10
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 5
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 6
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 7
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中