衰える日本の自動車産業...日韓接近を促した「世界最大の自動車輸出大国」中国の電気自動車
The China Factor
首脳会談に先立ち、韓国人原爆犠牲者慰霊碑を訪れた韓国の尹錫悦大統領(左)と岸田文雄首相(5月21日、広島市) YUICHI YAMAZAKIーPOOLーREUTERS
<戦後最悪の関係から急速な改善へと日本と韓国を動かす中国ファクター>
主要7カ国首脳会議(G7広島サミット)最終日の5月21日、日本の岸田文雄首相と韓国の尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領が首脳会談を行った。3月の東京、5月初旬のソウルに続く、2カ月で3度目の会談だ。
日本の植民地支配などの歴史問題が大きなしこりとなり、日韓関係は長い間険しい時代が続いてきた。韓国社会と野党には今も根強い反日感情があるから、両国関係の「雪解け」が長続きする保証はない。
それでも、戦後最悪の日韓関係とも言われた文在寅(ムン・ジェイン)前大統領時代と比べれば、大きく改善したのは間違いない。その背景にあるのが、安全保障分野における日韓共通の危機感だ。とりわけ、北朝鮮の度重なるミサイル発射実験は、日韓両国にとって大きな脅威となっている。
日韓の接近には、中国の脅威も影響している。習近平(シー・チンピン)政権は国内では権威主義的な姿勢を強め、国外では日韓の海洋インフラがある海域で、攻撃的に振る舞うようになった。
日韓共に中国との関係は悪化しているが、最近は中韓関係の悪化が特に目立つ。尹が中国の台湾政策を批判したところ、中国外務省が定例会見で「口出しをするな」と反発したり、中国共産党系タブロイド紙が尹政権の日米への接近を批判したところ、北京の韓国大使館が抗議を申し入れたりといった具合だ。
しかし、日中韓の「三角関係」を考える上で、もう1つ重要な要素がある。貿易だ。日本も韓国も、中国との経済関係が大きく変化しており、今や中国はそれぞれの国の重要戦略産業にとって強力な競争相手となっている。
中国の脅威が、日韓の「古傷」をめぐる苦々しい感情を凌駕する大きさとなり、結果として日韓関係の改善を促したとも言えるわけだ。
かつては中国といえば、巨大市場と旺盛な消費意欲が、日韓の輸出産業に大きな恩恵をもたらしてくれる存在だった。だが今はその構図が変わってきた。それが最も目立つのは自動車産業、とりわけ急成長する電気自動車(EV)の分野だろう。
衰える日本の自動車産業
ここでは日本のほうが、大きな痛みを感じている。最近の統計では、中国は既に日本を追い抜き、世界最大の自動車輸出大国となっている。
日本の自動車メーカーは、中国市場でも苦戦している。中国では国産車のシェアが拡大しており、日本車の売り上げは急減しているのだ。2023年3月の日産自動車の中国における新車販売台数は前年比25%減、ホンダとトヨタ自動車も約19%減となった。