最新記事
日韓関係

衰える日本の自動車産業...日韓接近を促した「世界最大の自動車輸出大国」中国の電気自動車

The China Factor

2023年6月6日(火)12時40分
コーリー・リー・ベル、エレナ・コリンソン、施訓鵬(シー・シュンポン)(いずれもシドニー工科大学・豪中関係研究所)

230613p31_TCB_02.jpg

EV最大手のBYDをはじめ中国勢の猛攻に日韓は対抗できるか(タイのEV展示会、2月) ZUMA PRESS/AFLO

これは日本の対中輸出全般にも打撃を与えている。22年12月の中国向け輸出は前年比6.2%減となった。23年1月は17.1%もの大幅減、3月になってもマイナス7.7%と、減少傾向が衰える気配はない。

これだけでも日本の自動車産業には大問題だが、EV分野における中国メーカーの快進撃は、もっと大きな問題になる可能性がある。

ボストン・コンサルティング・グループの昨年の予測によると、世界の自動車市場におけるEVの重要性は今後ますます大きくなり、25年までに世界の軽自動車販売の20%、35年には約60%を占めることになりそうだ。

国際エネルギー機関(IEA)の報告書によると、中国は22年、世界のEV輸出市場の約35%を占めた。前年と比べて10ポイントもの拡大だ。

これに対して日本のEV市場でのシェアは、18年は約25%あったが、22年には10%以下に落ち込んでいる。いずれ自動車市場の半分以上を占めることになるEV分野で、中国に大きく後れを取っているわけだ。

日本の経済全体における自動車産業の重要性を考えると、これは重大問題であることが分かる。なにしろ日本の大手企業トップ3のうち2社は自動車メーカー(トヨタとホンダ)であり、自動車産業は直接および間接的に約540万人、つまり日本の労働人口の約8%を雇用している。

自動車と自動車部品は、22年の日本の輸出総額の18%に相当する1360億ドルを稼ぎ出した。このような状況で、世界のEV市場で中国が圧倒的な競争力とシェアを獲得しつつあることは、日本経済にとって大きな危険をもたらす恐れがある。

環境保護団体クライメート・グループの最近の報告書によると、このまま日本の自動車メーカーがEV市場で伸び悩めば、将来的には170万人の雇用と数十億ドルの利益を失う恐れがある。それは日本のGDPが14%落ち込むことにつながりかねない。

韓国は、自動車産業の相対的な重要性は日本より低いが、やはり国の経済の命運を左右する役割を担っており、こうした不安もある程度、共有している。

韓国の自動車産業は20年のGDPの約3%、製造業雇用の11%以上を占めている。国内時価総額トップ10に現代自動車(4位)、起亜自動車(5位)、現代モービス(6位)が名を連ね、1位のサムスンはハイテク自動車部品のサプライヤーでもある。

22年には世界の自動車メーカー上位20社に韓国企業が2社、21年には自動車部品メーカー上位100社に9社がランクインするなど、自動車産業は半導体や電子機器と並んで、台頭する韓国の先進的製造業の象徴になっている。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

NYタイムズ、パープレキシティAIを提訴 無断複製

ワールド

プーチン氏、インドに燃料安定供給を確約 モディ首相

ビジネス

ネットフリックス、ワーナー資産買収で合意 720億

ビジネス

米ミシガン大消費者信頼感、12月速報値は改善 物価
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い国」はどこ?
  • 2
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 3
    「ボタン閉めろ...」元モデルの「密着レギンス×前開きコーデ」にネット騒然
  • 4
    左手にゴルフクラブを握ったまま、茂みに向かって...…
  • 5
    主食は「放射能」...チェルノブイリ原発事故現場の立…
  • 6
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 7
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 8
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 9
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 10
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 1
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 2
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 5
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 6
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 7
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 8
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 9
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 10
    トランプ支持率がさらに低迷、保守地盤でも民主党が…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中