最新記事
日韓関係

衰える日本の自動車産業...日韓接近を促した「世界最大の自動車輸出大国」中国の電気自動車

The China Factor

2023年6月6日(火)12時40分
コーリー・リー・ベル、エレナ・コリンソン、施訓鵬(シー・シュンポン)(いずれもシドニー工科大学・豪中関係研究所)

韓国政府が昨年9月、30年までにEV市場の世界シェアを12%に引き上げるという目標を掲げて約720億ドルの投資の強化を発表したことも、業界としての戦略的重要性を物語る。

中国との競争が激化するなか、韓国の自動車産業は、今のところ日本よりはるかに健闘している。

韓国の自動車輸出総額は22年に初めて500億ドルを超えた。同年12月に月間で過去最高の54億2000万ドルに達した後、わずか2カ月で記録を更新。23年2月は前年同月比47.1%増の56億ドルだった。同月の自動車と部品の輸出総額は76億ドルで、6年ぶりに輸出品目の1位となり、総輸出額の15.2%を占めている。

単価が高いEVの輸出も伸びており、23年2月の輸出額は前年同月比83.4%増の20億2000万ドルだった。

ただし、中国でのビジネスチャンスや競争を考えると、喜んでばかりはいられない。中国市場における韓国車のシェアは、16年の8%近くから22年は2%を下回った。22年第1四半期には販売台数が前年同期比で40%減少したことを受けて、韓国の複数の自動車メーカーが中国国内の工場の閉鎖を決めた。

もっとも、中国市場でのシェアの低下と、あらゆる地域における中国との競争激化の影響は、韓国の自動車産業に限ったことではない。

韓国の対中輸出総額は23年に入って大幅に縮小し、ほとんどの月で前年比30%前後、落ち込んでいる。世界の対中輸出に韓国が占める割合も20%を下回って05年以来の低水準になり、韓国の輸出量全体が押し下げられて、4月は前年同月比14%減だった。

この下落は、自動車販売台数の減少に加えて、近年は最も収益性の高い輸出品である韓国製半導体の不調が響いている。中国国内の供給業者や中国国内に拠点を置く業者に押され、中国向け輸出が大幅に落ち込んでいる。

対中輸出の後退は韓国のハイテク輸出全般にとって、より大きな危険の前触れになる可能性が高い。韓国貿易協会国際貿易通商研究院の22年の報告書によると、中国は5つの主要新興産業のうち、先端ディスプレイ、充電式バッテリー、新世代半導体の3つで既に市場をリードしている。

急がれる資源安全保障

日本と韓国にとって対中貿易の補完性の恩恵が薄れている一方で、競争における経済的脅威が実質的に高まっているという視点からも、日韓関係の改善を説明できる。

中国の権威主義や好戦的な態度、覇権主義的野心が高まっていることへの懸念を背景に、日本と韓国はそれぞれ中国との2国間関係が悪化しているようだ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国、フェンタニル巡る米の圧力に「断固対抗」=王外

ワールド

原油先物、週間で4カ月半ぶり下落率に トランプ関税

ビジネス

クシュタール、米当局の買収承認得るための道筋をセブ

ビジネス

アングル:全米で広がる反マスク行動 「#テスラたた
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
2025年3月11日号(3/ 4発売)

ジャンルと時空を超えて世界を熱狂させる新時代ピアニストの「軌跡」を追う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない、コメ不足の本当の原因とは?
  • 3
    113年間、科学者とネコ好きを悩ませた「茶トラ猫の謎」が最新研究で明らかに
  • 4
    一世帯5000ドルの「DOGE還付金」は金持ち優遇? 年…
  • 5
    強まる警戒感、アメリカ経済「急失速」の正しい読み…
  • 6
    著名投資家ウォーレン・バフェット、関税は「戦争行…
  • 7
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 8
    定住人口ベースでは分からない、東京23区のリアルな…
  • 9
    テスラ大炎上...戻らぬオーナー「悲劇の理由」
  • 10
    34年の下積みの末、アカデミー賞にも...「ハリウッド…
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天才技術者たちの身元を暴露する「Doxxing」が始まった
  • 4
    アメリカで牛肉さらに値上がりか...原因はトランプ政…
  • 5
    ニンジンが糖尿病の「予防と治療」に効果ある可能性…
  • 6
    「浅い」主張ばかり...伊藤詩織の映画『Black Box Di…
  • 7
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 8
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない…
  • 9
    「絶対に太る!」7つの食事習慣、 なぜダイエットに…
  • 10
    ボブ・ディランは不潔で嫌な奴、シャラメの演技は笑…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 9
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 10
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中