「世界の関心が失われないように...」ウクライナ人歌手もコメディアンも戦い続ける
Pop Culture Goes to War
パンクロックバンド「ナイブ」のボーカルを務めるアレクサンドル・イワノフは、先日モスクワで開いたコンサートで観客に、もっとマーシャ・モスカレワのことを知ってくれと呼びかけた。
13歳のモスカレワは学校で、ロシア軍のロケットがウクライナの母娘に向かって飛んでいく絵を描き、そのせいで父親が「軍の評判を貶めた」として禁錮2年の刑に処されている。イワノフの発言を受けて、観客は一斉に叫んだ。
「戦争なんてクソ食らえ!」
しかしロシアの独立系世論調査機関レバダ・センターの調べでも、ロシア国民の70%以上は今なお「ウクライナにおけるロシア軍の行動を支持する」と答えている。
声を上げたい人がいても、ロシア政府は強引に彼らを黙らせる。昨年9月、国民的歌手で74歳のアーラ・プガチョワは「自分も『外国の代理人』に指定しろ」と政府に迫った。
夫のマクシム・ガルキンが「外国の代理人」リストに載っているからだ。しかしプガチョワのファン(高齢者が多い)の反発を恐れるロシア政府は、彼女の要求を黙殺している。
ロシア人がこの戦争を支持している限り、ウクライナ人は彼らとの友情や親戚付き合いを断つしかない。
「最近は私も、死んだロシア人の話を笑いのネタにすることが増えた」と言うのは、コメディアンのアントン・ティモシェンコ。「みんな、以前よりずっとダークになっている」
ウクライナのコメディアンたちは今、周辺各国でステージに立ち、祖国への支援を呼びかけている。ハンナ・コチェグラもその1人だが、彼女はポーランドでロシア語を耳にしたとき、背筋が寒くなったと本誌に語った。
「もう何カ月もロシア語を聞いてなかったから、とっさに『あ、敵がいる。私、殺されちゃう』って思った。今は、私の脳はそういうふうに反応してしまう」
コチェグラはステージでもこの話をする。
「ヨーロッパは不思議ね。ロシア人が平気で街を歩いているでしょ。なのに誰も、彼らを殺さない。ウクライナでは違う。ウクライナではロシア人を殺せる。合法的にね。だって世界で一番偉大な国だから」