最新記事
ウクライナ情勢

「世界の関心が失われないように...」ウクライナ人歌手もコメディアンも戦い続ける

Pop Culture Goes to War

2023年6月1日(木)19時00分
マイケル・ワシウラ(在ウクライナ)

パンクロックバンド「ナイブ」のボーカルを務めるアレクサンドル・イワノフは、先日モスクワで開いたコンサートで観客に、もっとマーシャ・モスカレワのことを知ってくれと呼びかけた。

13歳のモスカレワは学校で、ロシア軍のロケットがウクライナの母娘に向かって飛んでいく絵を描き、そのせいで父親が「軍の評判を貶めた」として禁錮2年の刑に処されている。イワノフの発言を受けて、観客は一斉に叫んだ。

「戦争なんてクソ食らえ!」

しかしロシアの独立系世論調査機関レバダ・センターの調べでも、ロシア国民の70%以上は今なお「ウクライナにおけるロシア軍の行動を支持する」と答えている。

声を上げたい人がいても、ロシア政府は強引に彼らを黙らせる。昨年9月、国民的歌手で74歳のアーラ・プガチョワは「自分も『外国の代理人』に指定しろ」と政府に迫った。

夫のマクシム・ガルキンが「外国の代理人」リストに載っているからだ。しかしプガチョワのファン(高齢者が多い)の反発を恐れるロシア政府は、彼女の要求を黙殺している。

ロシア人がこの戦争を支持している限り、ウクライナ人は彼らとの友情や親戚付き合いを断つしかない。

「最近は私も、死んだロシア人の話を笑いのネタにすることが増えた」と言うのは、コメディアンのアントン・ティモシェンコ。「みんな、以前よりずっとダークになっている」

ウクライナのコメディアンたちは今、周辺各国でステージに立ち、祖国への支援を呼びかけている。ハンナ・コチェグラもその1人だが、彼女はポーランドでロシア語を耳にしたとき、背筋が寒くなったと本誌に語った。

「もう何カ月もロシア語を聞いてなかったから、とっさに『あ、敵がいる。私、殺されちゃう』って思った。今は、私の脳はそういうふうに反応してしまう」

コチェグラはステージでもこの話をする。

「ヨーロッパは不思議ね。ロシア人が平気で街を歩いているでしょ。なのに誰も、彼らを殺さない。ウクライナでは違う。ウクライナではロシア人を殺せる。合法的にね。だって世界で一番偉大な国だから」

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

スペイン、関税対策で国内企業に大規模支援 米は「愚

ビジネス

家計の消費支出、2月は3カ月ぶり減少 物価高で節約

ビジネス

米関税、1968年以来の大幅増税 世界景気後退リス

ビジネス

日経平均は大幅続落で寄り付く、米株急落の流れ引き継
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最後の1杯」は何時までならOKか?...コーヒーと睡眠の「正しい関係」【最新研究】
  • 2
    【クイズ】日本の輸出品で2番目に多いものは何?
  • 3
    アメリカで「最古の銃」発見...いったい誰が何のために持ち込んだ?
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    得意げに発表した相互関税はトランプのオウンゴール…
  • 6
    「ネイティブ並み」は目指す必要なし? グローバル…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 8
    アメリカから言論の自由が消える...トランプ「思想狩…
  • 9
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 10
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 6
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 7
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 8
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 9
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 7
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 8
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアで…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中