最新記事
ウクライナ情勢

「世界の関心が失われないように...」ウクライナ人歌手もコメディアンも戦い続ける

Pop Culture Goes to War

2023年6月1日(木)19時00分
マイケル・ワシウラ(在ウクライナ)

230606p52_UKN_02.jpg

映画監督のセンツォフは再び戦場へ NURPHOTO/GETTY IMAGES

以来、彼女が開いたコンサートは数え切れない。売り上げは祖国に送り、戦争遂行のために使ってもらう。彼女自身はヨーロッパにいて、人々がウクライナへの関心を失わないよう努めている。

ヘイルだけではない。ロシア軍がブチャの村を制圧した昨年2月27日、ロックバンド「ブームボックス」でボーカルを担当するアンドリイ・フリウニュークは領土防衛隊に志願してキーウにいた。

ニューヨーク・ヤンキースの帽子をかぶり、手にはライフル銃を持って由緒ある聖ソフィア大聖堂の前に立ち、愛国歌「ああ、草原の赤きガマズミよ」をアカペラで歌い上げた。

クリミア出身の映画監督オレグ・センツォフは2014年の一方的「併合」に抗議してロシア側に逮捕・投獄されていたが、19年に捕虜交換でウクライナに戻った。彼は首都防衛のために戦い、その後は激戦地バフムトに向かった。

テレビ司会者のセルヒイ・プリトゥラは得意の話術を武器に次々と資金集めのイベントを開き、トルコ製の攻撃用無人機やイギリス製の装甲兵員輸送車を含む数千万ドル相当の装備品をウクライナ軍に寄贈している。

ロシア文化人も抵抗を

今度の戦争が始まるまで、ウクライナでは文化人も互いに異なる政治的主張を声高に叫び、いがみ合っていた。だが今では、名のある文化人の誰もが侵略者ロシアへの徹底抗戦を呼びかけている。

ロシア国内とは大違いだ。ロシアでは政府系メディアが戦争の真実を国民に知らせまいと必死になっているが、それでも著名な文化人の多くが公然と政府を批判している。

その結果、ラッパーのモルゲンシュテルンやノイズMC、オクシミロン、歌手のゼムフィラやテレビ司会者のマクシム・ガルキンらは、既に当局から「外国の代理人」のレッテルを貼られている。国外へ脱出した文化人も多い。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

原油先物、週間で4カ月半ぶり下落率に トランプ関税

ビジネス

クシュタール、米当局の買収承認得るための道筋をセブ

ビジネス

アングル:全米で広がる反マスク行動 「#テスラたた

ワールド

トルコ中銀が2.5%利下げ、インフレ鈍化で 先行き
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
2025年3月11日号(3/ 4発売)

ジャンルと時空を超えて世界を熱狂させる新時代ピアニストの「軌跡」を追う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない、コメ不足の本当の原因とは?
  • 3
    113年間、科学者とネコ好きを悩ませた「茶トラ猫の謎」が最新研究で明らかに
  • 4
    一世帯5000ドルの「DOGE還付金」は金持ち優遇? 年…
  • 5
    強まる警戒感、アメリカ経済「急失速」の正しい読み…
  • 6
    著名投資家ウォーレン・バフェット、関税は「戦争行…
  • 7
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 8
    定住人口ベースでは分からない、東京23区のリアルな…
  • 9
    テスラ大炎上...戻らぬオーナー「悲劇の理由」
  • 10
    34年の下積みの末、アカデミー賞にも...「ハリウッド…
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天才技術者たちの身元を暴露する「Doxxing」が始まった
  • 4
    アメリカで牛肉さらに値上がりか...原因はトランプ政…
  • 5
    ニンジンが糖尿病の「予防と治療」に効果ある可能性…
  • 6
    「浅い」主張ばかり...伊藤詩織の映画『Black Box Di…
  • 7
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 8
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない…
  • 9
    「絶対に太る!」7つの食事習慣、 なぜダイエットに…
  • 10
    ボブ・ディランは不潔で嫌な奴、シャラメの演技は笑…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 9
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 10
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中