スパイ防止法違反など37の罪で起訴されたトランプ 機密文書持ち出し問題で正当性立証は困難か
米司法省が公表した、トランプ氏のフロリダ州の別宅のバスルームに置かれていた文書保管用の箱。2021年撮影(2023年 ロイター)
ホワイトハウスからの機密文書持ち出し問題で起訴されたトランプ前米大統領が、自らの正当性を立証するのは極めて難しい。法制度と事実関係の両面とも、トランプ氏に有利な要素が見当たらないからだ。複数の法律専門家はこうした見方をしている。
フロリダ州の連邦地裁が9日開示した起訴状によると、トランプ氏はスパイ防止法違反や司法妨害の共謀、偽証など37の罪に問われている。
国家安全保障に関する法律専門家らが衝撃を受けたのは、起訴状で示された書類や写真、テキストメッセージ、音源、関係者発言などの証拠の幅広さだ。これらは、トランプ氏が不正な手法で機密文書を持ち出し、そうした事実を隠ぺいしようとしたという検察側の主張を強く裏付けているという。
ブレナン・センター・フォー・ジャスティスの国家安全保障法専門家、エリザベス・ゴイテイン氏は「詳しく見ていくと、このような機密文書の取り扱いのずさんさと、連邦捜査局(FBI)に渡そうとしないための一致した取り組みという観点で、かなりショックだ」と述べた。
トランプ氏の弁護団はコメント要請に応じていない。トランプ氏本人は一貫して無実を主張するとともに、訴追は政敵による「魔女狩り」だとの見解を繰り返している。9日には自身が立ち上げたソーシャルメディアのトゥルース・ソーシャルで「罪など何も存在しない。司法省とFBIが私に対して何年も行ってきたものを除けば」と投稿した。
起訴内容の中で有罪となれば最も重い刑が科せられるのは司法妨害の共謀で、最大で20年の禁錮刑が待ち受けることになる。
法律専門家の見解では、トランプ氏が召喚状の対象となった文書を保持していると認識しつつ、提出を拒否した上で、弁護団に対してFBIをごまかすよう促したことが証拠で示されているもようだ。
保守系シンクタンクのケイトー研究所の法律専門家、クラーク・ニーリー氏は「これは想像し得る限りで最も明確な司法妨害だ」と語った。
ある弁護士は、司法妨害は被告を弁護するのが特に難しいと解説。「それは人々の気分を害し、正当な司法手続きから事態を隠し、ほとんどの人はなぜ罪になるのかを理解している」と付け加えた。
トランプ氏が何年も機密文書を隠し続けようとしたとされる問題こそ、ジャック・スミス特別検察官がトランプ氏起訴を決めた大きな要因の1つになった公算が大きい、というのが法律専門家の見立てだ。