スパイ防止法違反など37の罪で起訴されたトランプ 機密文書持ち出し問題で正当性立証は困難か
問題なのは隠ぺい工作
捜査中にトランプ氏の弁護団はFBIに対して、所持していた機密文書は全て渡したと伝えたが、それは偽りだった。弁護団側は捜査当局を意図的に欺こうとしたわけでないと説明している。
ブレナン・センターのゴイテイン氏は「これは隠ぺい工作が罪そのものより悪質とされる状況だ。トランプ氏が単なる不注意(で文書を渡さなかったので)あれば、立件されなかっただろう」と話した。
共謀行為によって、司法妨害の罪がさらに重大化する。検察側が証明しなければならないのはトランプ氏が別の誰かとともに、捜査の目をくらまそうとしたという点で、そうした企てが成功したかどうかは問題ではない。
ケイトー研究所のニーリー氏は、起訴状を読む限り、検察側はトランプ氏の共謀行為を証言してくれる多くの人を得られそうだとみている。
トランプ氏は、文書持ち出し前に機密指定を解除したと申し立てている。しかし起訴に際して提示された録音データでトランプ氏が数人に機密書類を見せた上で、大統領として機密指定解除はできたが、実際はしなかったと述べたことが分かっており、トランプ氏の主張は説得力が乏しい。
さらに機密指定問題は最終的には、あまり意味をなさなくなるだろう。それは検察側がトランプ氏をスパイ防止法違反で起訴しているためで、機密指定制度の導入前に当たる第一次世界大戦時に制定されたスパイ防止法は、国家防衛に関する情報を権限なく所持するだけで違法とみなすからだ。
ジョージタウン大学のトッド・ハントリー教授(法学)は「例えば全ての文書の機密指定を解除したとしても、スパイ防止法では関係がなくなる」と述べた。
トランプに残された活路は?
もっともトランプ氏側にも、裁判で勝利する可能性がないわけではない。弁護団は証人の申し立てに異議を唱える可能性があるし、トランプ氏が弁護団の助言に従っただけで法律違反の意図はなかったと主張してもおかしくない。
また裁判になれば審理が開かれるのは、特別検察官が訴状を持ち込んだフロリダ州の陪審団となるが、同州は保守派が強い。ここで有罪に反対する陪審員が1人出ただけで、トランプ氏の審理は無効になる。
トランプ氏の弁護団は、同氏が立候補している2024年の大統領選が終わるまで、審理開始を延期するよう要請するケースもあり得る。法律専門家の間では、実際にトランプ氏が当選してしまった場合、「無罪放免」となるのかどうかについては意見が分かれている。
(Jack Queen記者)