最新記事
注目ニュースを動画で解説

新鋭艦建造も技術開発もままならず... 専門家が想定するロシア潜水艦隊のこれから【注目ニュースを動画で解説】

2023年6月8日(木)11時30分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
ロシア潜水艦隊

Newsweek Japan-YouTube

<冷戦終了後もアメリカに次ぐ水準を持つと言われながら、経済制裁で新鋭艦建造も技術開発もままならないロシアの潜水艦の現状、そして未来について考察したアニメーション動画の内容を一部紹介する>

ロシアの潜水艦は今なお世界のトップクラスと言われているが、ウクライナ戦争においては出番が少ない。しかし、この戦争の影響はある意味でロシア海軍にも及んでいるか、少なくとも及ぼうとしている。

ロシアの潜水艦隊はこれからどうなるのか。専門家が想定する2つのシナリオとは──。

本記事では、本誌YouTubeチャンネルの動画「「世界最強クラス」ロシア潜水艦隊の暗い将来、専門家が想定する2つのシナリオ【アニメで解説】」の内容をダイジェスト的に紹介する。

◇ ◇ ◇

2009年に当時のロシア大統領ドミトリー・メドベージェフは、「まっとうな海軍なしには、ロシアに国家としての未来はない」と力説したが、ロシアの水上艦隊はその期待に応えていない。

一方で、潜水艦は今も世界のトップクラスと言われている。

nwyt0607_1.jpg

しかし、今のロシアにとってはウクライナ戦争に勝つことが最優先。出番の少ない潜水艦の性能向上は後回しにされかねない。

nwyt0607_2.jpg

NPO・核脅威イニシアチブによれば、ロシアが保有する潜水艦は通常動力(ディーゼル機関)と原子力を合わせて推定58隻とされている。ロシアの潜水艦の中でも、ヤーセン型とその改良版であるヤーセンM型の巡航ミサイル搭載原子力潜水艦(SSGN)は「今日のロシア海軍の至宝」だと米シンクタンク・ランド研究所のエドワード・ガイストは言う。

nwyt0607_3.jpg

ロシア海軍は旧ソ連海軍時代から「水中」を強みとしていた。

nwyt0607_4.jpg

ただし、理論上は優れていても、「ソ連時代の潜水艦がよく整備されていて今も機能するかは保証の限りではない」とハーグ戦略研究所(HCSS)のアナリスト、フレデリック・マーテンズは指摘。イギリスに本部を置く国際戦略研究所(IISS)のニック・チャイルズ上級研究員も「(ロシアの潜水艦の性能は)実戦で十分に検証されたことがない」という。

nwyt0607_5.jpg

対ウクライナ作戦においてもロシア海軍の役割は非常に限定的で、核搭載可能な潜水艦部隊が直接的な役割を果たしたことはない。

nwyt0607_7.jpg

西側諸国はロシアの戦争遂行能力を損なわせるべく制裁を科している。ロシアの潜水艦がどこまで外国の技術に依存しているか検証することは難しいものの、開発の少なくとも一部には国外の技術が必要になると、アメリカ海軍分析センターのドミトリー・ゴレンブルグは言う。

nwyt0607_8.jpg

ロシアの潜水艦隊の将来について、専門家は2つのシナリオを想定している。

ロシア軍全体の資源に制約が生じた場合には、最も損害が大きい部隊(地上軍など)の再建が優先される可能性が高いとゴレンブルグはみる。すなわち、将来の潜水艦の建造が制限される、という展開が1つ。2つ目は、チャイルズが示唆する「相対的な重要性を考えて潜水艦にもっと投資を回す」というシナリオだ。

nwyt0608_11.jpg

■詳しくは動画をご覧ください。

展覧会
京都国立博物館 特別展「日本、美のるつぼ」 鑑賞チケット5組10名様プレゼント
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米、対中関税引き下げ検討か 半減案との情報 財務長

ワールド

OPECプラス8カ国、6月も生産拡大提案へ 実現な

ビジネス

米ボーイング、1-3月期の損失予想ほど膨らまず 航

ビジネス

米新築住宅販売、3月7.4%増 ローン金利低下で予
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負かした」の真意
  • 2
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学を攻撃する」エール大の著名教授が国外脱出を決めた理由
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    アメリカは「極悪非道の泥棒国家」と大炎上...トラン…
  • 6
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 7
    日本の10代女子の多くが「子どもは欲しくない」と考…
  • 8
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 9
    トランプの中国叩きは必ず行き詰まる...中国が握る半…
  • 10
    ウクライナ停戦交渉で欧州諸国が「譲れぬ一線」をア…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 4
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初…
  • 5
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 6
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 7
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 8
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中