最新記事
軍事

F16戦闘機でウクライナの「空の戦い」は大きく変わる...ソ連製からアメリカ製へ

A Major Upgrade

2023年5月31日(水)13時18分
セバスチャン・ロブリン(国家安全保障ライター)

230606p34_F16_02.jpg

ロシアの高性能地対空ミサイルシステムS300 SERGEY PIVOVAROVーREUTERS

このためウクライナは、F16の整備施設の確保だけでなく、滑走路から瓦礫などの異物を取り除く手配が必要だ。これが何より大きな課題だと指摘する専門家もいる。ただ飛ばすだけなら、11年の合同軍事演習でウクライナの基地からF16が飛んだことはある。

ロシアのミサイル攻撃で全滅などという事態にならないように、F16の配備場所は、一握りの基地以外の場所にも分散させるべきだ。

ロシア国境や前線に配置されたロシアの長距離レーダーや地対空ミサイルの発射装置は、ウクライナ領内を飛行する戦闘機を発見して破壊できる。このためウクライナのF16は、超低空飛行でレーダーを避けようとするだろう。

それでもロシアのA50早期警戒管制機や、スホーイ35やミグ31といった戦闘機が、下方のF16を探知して攻撃する能力(ルックダウン/シュートダウン能力)を持っていれば、撃墜される可能性が高い。

このためウクライナのF16パイロットたちは、なるべくレーダーを使わないようにして探知を回避しようとするかもしれない。だが、それは目隠しをして飛行するようなものであり、敵の動きを知ったり、ミサイル発射のためにレーダーをオンにしたりするタイミングを地上からの通信に頼らなくてはならない。

欧州はF35に切り替え

現状、ウクライナ機の攻撃の多くはこの段階で失敗している。彼らが使うR27レーダー誘導ミサイルは、目標に着弾するまで、発射機の機首にあるレーダーが、誘導のために目標に照準を合わせていなければならないからだ。

ロシア側の戦闘機が、より射程が長く、ミサイル自体が目標を追尾できる(つまり発射機は飛び去ることができる)R77-1ミサイルで反撃してきた場合、ウクライナ機は飛び去る(ミサイルは目標に到達できない)か、自滅する(目標は破壊するが、自らも逃げ遅れる)。

F16なら違う。搭載可能なAIM-120中距離ミサイルは、R77と同等の射程を持つ上に、自動追尾機能があるため発射後は飛び去れるのだ。

それでもロシアが、より高性能のレーダーと、著しく射程が長いR37Mミサイルを搭載したミグ31やスホーイ35を投入してきたら、ウクライナ機に勝ち目はない。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

中国百度、7─9月期の売上高3%減 広告収入振るわ

ワールド

ロシア発射ミサイルは新型中距離弾道弾、初の実戦使用

ビジネス

米電力業界、次期政権にインフレ抑制法の税制優遇策存

ワールド

EU加盟国、トランプ次期米政権が新関税発動なら協調
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 8
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中