中国は「停戦仲介」で、ウクライナに領土放棄を迫っていた──米紙報道
China denies pressuring Europe to accept Russia's gains in Ukraine
モスクワを訪問した習誓平。4月20日から2日続けてプーチンと会談した Sputnik/Pavel Byrkin/Kremlin/REUTERS
<ロシアに撤退を求めない停戦案は「仲介」ではなく「ロシアの手先」だ>
ロシアとウクライナの仲介を買って出た中国は、西側諸国に対し、ウクライナ国内の占領地域をロシアに残す形で「即時停戦」を受け入れるよう迫っていたと、5月26日付の米ウォール・ストリート・ジャーナルが伝えた。中国は5月29日、この報道を否定した。
ウクライナのニュースサイト「ウクラインスカ・プラウダ」によれば、同国のドミトロ・クレバ外相は週末に、中国側の提案は受け入れられないと拒絶。ソーシャルメディアへの投稿で国民に対し、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領もウクライナ政府も領土問題での譲歩は一切受け入れないと確約した。
中国政府の李輝ユーラシア事務特別代表は、5月16日から26日にかけてヨーロッパを歴訪。ウクライナを皮切りに、ポーランド、フランス、ドイツ、欧州連合(EU)、そしてロシアを訪れた。4月には習近平国家主席が、ウクライナ侵攻が始まって以来初めてゼレンスキー大統領と電話会談を行い、ウクライナで続く戦争について、中国として停戦に貢献していく立場を表明していた。
ウォール・ストリート・ジャーナルは、李がポーランド、フランス、ドイツとEUの当局者に対して、すぐに戦闘を終わらせるよう呼びかけたと報道。ウクライナにとって受け入れ難い「紛争凍結」(現状で領土を固定する)という結末を示唆したとしていた。
クレバは国民に報道への「冷静な対応」を促す
李と西側当局者の会談に同席していたある外交官は同紙に対し、「我々はロシア軍が撤退しない限り、紛争凍結は国際社会の利益にかなわないと説明した」と語った。また別の外交官は同紙に対して、中国は「おそらく西側諸国の団結を試していたのだろう」と述べた。
中国外務省の毛寧報道官は、この報道を否定。李はウクライナでの紛争に関する中国政府の立場を伝え、意見の一致点を探るために「さまざまな当事者の意見や助言」に耳を傾けたのだと主張し、「中国が引き続き建設的な影響力を発揮していくことに、全ての当事者が期待を示した」と説明した。
クレバはウクライナ国民に向けたメッセージの中で、報道内容について確認するために、李が訪問したヨーロッパ諸国の当局者らに連絡を取ったと明かした。
その結果、「ロシアが占領しているウクライナの領土をロシアのものと認めるという発表や、それに関する話し合いがあったことを認めた者は一人もいなかった」と述べた。
クレバは国民に対して「冷静さと理性を保ち、報道に感情的な反応をしないように。我々はこのプロセスを管理している。ウクライナの知らないところで、何者かが我々の不利になるようなことをする事態は起きない」と述べ、中国が関与する話し合いは、ウクライナ政府が設定した条件に基づいて続けられるとつけ加えた。