最新記事
タイ

タイの経済成長率はASEAN加盟国でほぼ最下位、復活に必要なものとは?

THAILAND’S CHOICE

2023年5月22日(月)13時22分
ペートンタン・シナワット(タイ貢献党・首相候補)
タイ総選挙

タイ総選挙ではピタ党首(中央)が率いる前進党が第1党に JORGE SILVAーREUTERS

<かつて急成長を遂げたタイだが、誤った政策で国際的な信用も経済も失った。新たな投資を呼ぶには? 今こそ民主政治で変革を進めるべき時>

タイでは2014年の軍事クーデター以来、人権侵害と権力の乱用が蔓延した。国家としての国際的な評価は急落し、経済の見通しも暗転した。いま方向転換しなければ、タイの将来は暗いままだ。

プラユット現政権の下で、表現の自由は大きく制限された。若い政治活動家は虐待や投獄、国外追放の憂き目に遭った。ロヒンギャなど少数民族や経済移民は差別を受け、過酷な生活を強いられている。

所得格差と一般世帯の債務は、アジアでも最悪の部類に入っている。かつてタイ経済は急成長を遂げた時期もあったが、現在の経済成長率はASEAN(東南アジア諸国連合)加盟国で最下位に近い。

私がタイの首相に就任したなら、この国に必ず変革をもたらす(編集部注:5月14日の下院総選挙で筆者が首相候補のタイ貢献党は政権奪取を狙ったが、獲得議席数で第2党となった。今後、第1党となった前進党を中心に連立交渉が本格化する)。

タイ貢献党の信念は、共感に根差した資本主義こそ諸問題の唯一の解決策だというものだ。経済再建のため、少数者による支配や縁故主義を排し、自由で公正な競争を促して市場主導の革新性を追求していく。

格差解消には、効果的な福祉と所得支援が必要だ。昨年4月にわが党は労働者の技能開発を目指す「一家に1人ソフトパワー」構想を掲げた。潜在的な労働力を活用し、全国民の雇用機会と所得を増やす。

タクシン元首相の娘である私は、世界の多くの指導者と会い、外交について見識を深めることができた。

過去の誤った政策で損なわれたタイの信頼を回復する責任を痛感している。さらには持続可能性と包容力のある経済を強みにして、新たな投資を呼び込みたい。

ASEANの金融ハブになるという目標に向けては、デジタル経済にまつわる難題に対処できるインフラを確保しなければならない。

そのため17歳以上の国民全員に1万バーツ(約4万円)の電子ウォレットを提供する計画を既に発表した。さらには政府のシステムにブロックチェーン技術を導入し、公共サービスの利用を簡便にする。

タイは14年のクーデター後、友好的だった多くの国から制裁を科され、援助を打ち切られた。今は特に欧米諸国との関係を取り戻したい。

自動車
DEFENDERの日本縦断旅がついに最終章! 本土最南端へ──歴史と絶景が織りなす5日間
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ノルウェー政府系ファンド、洋上風力発電権益の49%

ワールド

米FDAワクチン部門トップがケネディ長官批判し辞任

ワールド

韓国憲法裁判所、尹大統領の弾劾巡り4日に判断

ワールド

米通貨監督庁、気候リスク指針を撤回 銀行に「負担大
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 9
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中