タイの経済成長率はASEAN加盟国でほぼ最下位、復活に必要なものとは?
THAILAND’S CHOICE
タイ総選挙ではピタ党首(中央)が率いる前進党が第1党に JORGE SILVAーREUTERS
<かつて急成長を遂げたタイだが、誤った政策で国際的な信用も経済も失った。新たな投資を呼ぶには? 今こそ民主政治で変革を進めるべき時>
タイでは2014年の軍事クーデター以来、人権侵害と権力の乱用が蔓延した。国家としての国際的な評価は急落し、経済の見通しも暗転した。いま方向転換しなければ、タイの将来は暗いままだ。
プラユット現政権の下で、表現の自由は大きく制限された。若い政治活動家は虐待や投獄、国外追放の憂き目に遭った。ロヒンギャなど少数民族や経済移民は差別を受け、過酷な生活を強いられている。
所得格差と一般世帯の債務は、アジアでも最悪の部類に入っている。かつてタイ経済は急成長を遂げた時期もあったが、現在の経済成長率はASEAN(東南アジア諸国連合)加盟国で最下位に近い。
私がタイの首相に就任したなら、この国に必ず変革をもたらす(編集部注:5月14日の下院総選挙で筆者が首相候補のタイ貢献党は政権奪取を狙ったが、獲得議席数で第2党となった。今後、第1党となった前進党を中心に連立交渉が本格化する)。
タイ貢献党の信念は、共感に根差した資本主義こそ諸問題の唯一の解決策だというものだ。経済再建のため、少数者による支配や縁故主義を排し、自由で公正な競争を促して市場主導の革新性を追求していく。
格差解消には、効果的な福祉と所得支援が必要だ。昨年4月にわが党は労働者の技能開発を目指す「一家に1人ソフトパワー」構想を掲げた。潜在的な労働力を活用し、全国民の雇用機会と所得を増やす。
タクシン元首相の娘である私は、世界の多くの指導者と会い、外交について見識を深めることができた。
過去の誤った政策で損なわれたタイの信頼を回復する責任を痛感している。さらには持続可能性と包容力のある経済を強みにして、新たな投資を呼び込みたい。
ASEANの金融ハブになるという目標に向けては、デジタル経済にまつわる難題に対処できるインフラを確保しなければならない。
そのため17歳以上の国民全員に1万バーツ(約4万円)の電子ウォレットを提供する計画を既に発表した。さらには政府のシステムにブロックチェーン技術を導入し、公共サービスの利用を簡便にする。
タイは14年のクーデター後、友好的だった多くの国から制裁を科され、援助を打ち切られた。今は特に欧米諸国との関係を取り戻したい。