エルドアンの政治生命に終止符は打たれるか──迫るトルコ大統領選、国際社会が目を光らせるべき2つのこと
Neither Free Nor Fair
エルドアン大統領が選挙結果を受け入れないシナリオも懸念される CAGLA GURDOGANーREUTERS
<超インフレ経済や大地震の被害で強権政治の限界が露呈、それでもエルドアンは不公正な選挙で独裁体制を維持するかもしれない>
5月14日、トルコはここ数十年で最も重要な選挙の投票日を迎える。この国では20年にわたり、レジェップ・タイップ・エルドアン大統領と公正発展党(AKP)が権力の抑制と均衡を排除し、反対意見を弾圧し、権威主義の道を突き進んできた。
しかし、経済危機と2月の大地震で国中が揺れ動くなか、今回の大統領選は、投票直前のいくつかの世論調査で野党陣営がリードしている。トルコの選挙は自由でも公正でもないが、エルドアンの政治生命に終止符が打たれる可能性は残されている。
エルドアンと与党・AKPはこの10年で何回か選挙に介入したが、常に成功したわけではない。2014年に首都アンカラの市長選でAKPの候補が敗れそうになると突然、国営通信の開票速報が中断され、数時間後に再開されるとAKPの候補の勝利が伝えられた。この選挙に異議を申し立てた野党の訴えは、憲法裁判所に却下された。
17年に議院内閣制から大統領制に移行する憲法改正を問う国民投票が行われた際は、投票日の午後に高等選挙委員会が、正式な公印がない投票用紙も集計すると発表した。結果は賛成が51.4%で、憲法改正案は成立した。
19年にはトルコ最大の都市イスタンブールの市長選でAKPの候補が敗退すると、集計体制の不備などのさまつな問題を口実に選挙自体が無効とされた。しかし再選挙では、野党候補がさらに差を広げて勝利した。
今回も大統領選と議会選を前に、AKPは選挙法の新たな改正、野党への迫害、恣意的な言論統制、有権者を取り込むための公共支出の急増など、さまざまな戦術を駆使してきた。
司法手続きで野党封じ
AKPは18年前後から連合を組む民族主義者行動党(MHP)と共に、22年に選挙法の改正案を可決した。最も重要な変更は、国内の全ての選挙を監督する最高選挙管理委員会(YSK)で紛争を裁定する裁判官の選出に関するものだ。新しい制度では、裁判官は年功序列ではなく抽選で選ばれることになる。
エルドアンは16年のクーデター未遂事件後に司法部門を粛清しており、ロイター通信によると20年の時点でトルコの裁判官2万1000人のうち45%は経験が3年以下だった。抽選の制度は、AKPが任命した裁判官が選挙案件を担当する確率を高める。さらに、YSKは今年1月、エルドアンの盟友と家族ぐるみの付き合いがある人物を新しい委員長に任命した。
YSKは既に、AKPに有利な裁定を出している。例えば、AKPから議会選に立候補している15人の政府閣僚に選挙期間中も閣僚の職務を続けることを認めており、彼らは省庁のリソースにアクセスできる。
AKPは自分たちに忠実な裁判官で固められたシステムを利用して、対立候補の出馬を阻止しようとしてきた。