最新記事
英王室

カミラ妃の王冠から特大ダイヤが外されたことに、「触れてほしくない」理由とは?

THE CROWN JEWEL

2023年5月10日(水)17時53分
ニティシュ・パーワ(スレート誌ライター)
メアリー王妃の王冠, コーイヌーア

まばゆい輝きを放つコーイヌーアがはめ込まれたメアリー王妃の王冠 GRAPHICAARTIS/GETTY IMAGES

<ダイヤモンドは黒歴史の輝き...「コーイヌーア」と呼ばれるインド産の特大ダイヤは外されたが、今回代わりにはめられた「カリナンダイヤモンド」も南アフリカ産であった...>

故エリザベス女王以来、70年ぶりに執り行われた英王室の戴冠式。この日のために、昨年末から特別な衣装や装飾具が、通常の保管場所であるロンドン塔から搬出され、さまざまな調整をなされてきた。

なかでも注目されていたのが、カミラ王妃が着けることになる王冠だ。1911年のジョージ5世の戴冠式に、メアリー王妃が着用したものを再利用すると発表されていたが、そこに付いている巨大ダイヤモンドに「歴史問題」が浮上していたのだ。

これはコーイヌーアと呼ばれる世界最大級のダイヤモンドで、原産地は、かつてイギリスの植民地だったインドとみられている。そしてインド政府は、かねてから、このダイヤモンドの返還を求めてきた。

文字どおり一世一代の晴れの日に、国家の黒歴史を持ち出されてはたまらないと、英王室はこの王冠からコーイヌーアを取り外すことにしたらしい。英ガーディアン紙によると、2月から王冠は「調整作業」のために展示から引っ込められており、5月末からは、ダイヤだけが「征服の象徴」としてロンドン塔に展示される予定とされている。インド人観光客が自国産の宝石を見るためには、30ポンド前後の入場料を払わなければいけないというわけだ。

王室は、コーイヌーアをめぐる議論が存在することも、それがインド産であることも認めていない。

ただ、今回の戴冠式に合わせてカミラが伝統に沿って新しい王冠を注文するのではなく、「持続可能性と効率のため」に既存の王冠を「再利用する」と発表していたことは、かなり苦しい自画自賛だった。

確かにチャールズ国王は環境保護に熱心なことで知られるが、カミラが王権の象徴である笏(しゃく)に、象牙を使ったものを選んだ事実を見ても、国王夫妻がそれほど真剣に環境保護を考えているとは思えない。

それでも、カミラの王冠からコーイヌーアが取り外されたことは、大英帝国が過去のものであることを象徴する出来事と言えるかもしれない。現在の王室は王冠の宝石1つにも世論の反応を気にしなければいけないし、かつて植民地だったインドは世界の舞台で大きな影響力を持つようになった。

社会的価値創造
「子どもの体験格差」解消を目指して──SMBCグループが推進する、従来の金融ビジネスに留まらない取り組み「シャカカチ」とは?
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

10月の全国消費者物価、電気補助金などで2カ月連続

ビジネス

欧州新車販売、10月は前年比横ばい EV移行加速=

ビジネス

ドイツ経済、企業倒産と債務リスクが上昇=連銀報告書

ビジネス

日産、タイ従業員1000人を削減・配置転換 生産集
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 8
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中