女性の収入面の「子育て罰」が特に大きい日本社会
日本では家事や育児の負担が女性に著しく偏っている ake1150sb/iStock.
<女性就業者の年収中央値は、結婚・出産によって3分の2に目減りする>
最近、「子育て罰」という言葉を聞くようになった。子どもができると育児の労力がかかり、教育費もかさむ。それはいつの時代もそうだが、今の日本では「罰(penalty)」と形容されるまでに、負担や損失が大きなものとなっている。
核家族化の進行により、同居の親からサポートを得る人は少なくなっている。また20歳過ぎまで学校教育を受けさせるのが常態化しており、教育費も高騰している。それを補うべく、公的な保育施設の拡充や大学等の学費減免が実施されているものの、まだまだ不十分なのが実情だ。
さらに女性の場合、出産・育児のために職を辞すことによる「逸失所得」も出てくる。ISSP(国際社会調査プログラム)が2019年に実施した意識調査の個票より、日本の女性有業者(25~54歳)の年収中央値を算出すると、未婚者が309万円で、既婚の子ありの者が207万円。大雑把に言うと、結婚・出産によって稼ぎが3分の2に目減りする。時短や家計補助のパート就労が多くなるためだ。
他国も同じではないかと思われるかもしれないが、そうではない。主要国について、女性有業者を未婚者と既婚者(子あり)に分けて、年収ないしは月収の中央値を計算すると<表1>のようになる。
結婚・出産で収入が減る国もあれば、その逆の国もある。数で見るとちょうど半々で、日本では33%収入が減るが、北欧のスウェーデンでは24%増えるという結果だ。「子育て罰」を科される国がある一方で、「子育てボーナス」がもらえる国もあるようだ。
家事や育児の負担という点でも、日本の女性には「罰」と言い得るほどの負担がのしかかる。30代前半の女性有業者で見ると、未婚者の仕事の平均時間(1日)は337分、家事・育児・介護は34分。有配偶者では順に246分、280分(総務省『社会生活基本調査』2021年)。合算は前者が371分、後者が526分で、既婚者になると負担が大きくなる。ゆえにフルタイム就業が困難になり、<表1>のような現実となる。
20~30代の未婚女性に結婚をためらう理由を問うと、「仕事・家事・育児・介護を背負うことになるから」という回答が38.6%で、男性(23.3%)との差が大きい(内閣府『人生100年時代における結婚・仕事・収入に関する調査』2021年)。女性の高学歴化が進み、フルタイム就業希望率も高まっている現在では、こうした「罰」は、昔にくらべてより強く意識されるようになっている。
「子育て罰」を「子育てボーナス」に変えようと、育児手当の増額などが検討されているが、そういう金銭面の支援だけでは足りない。個々の家庭において、家事や育児の負担が女性(母親)に著しく偏っている状況を是正しなければならない。少子化問題は、時代錯誤な性役割分業を続けている「ジェンダー」の問題とも捉える必要がある。