人気野党を解党させようとする体制派と、それぞれの「地雷」・タイ総選挙
前進党が解党を命じられる可能性は貢献党よりもずっと高い。同党の前身・新未来党は19年の総選挙で第3党に躍進した後、20年2月に憲法裁判所から些細な違反で解党を命じられている。
体制派にとっての「レッドライン」は2野党の同盟だ。政治的には両党の連立は理にかなっている。前出の世論調査によれば、両党の支持率の合計は60%以上。若者には前進党が、それ以外の年齢層では貢献党が強く、有権者層も相互補完関係にある。
ただし次期首相の選出には、軍が事実上任命する上院の反対を覆すだけの下院議席が必要だ。それに不敬罪改正をはじめ、体制派が脅威と見なす進歩的公約を掲げる前進党と手を組めば、貢献党も攻撃の矢面に立たされることになる。
体制派の権力者がどんな決断を下すにせよ、国際的な影響は大きいだろう。14年のクーデター後は多くの欧米諸国がタイとの協力を部分的に停止した。
比較的小規模な前進党の解党なら、現体制の評価は何とか保たれるだろうが、有権者の40%の支持を集めると予想される貢献党の解党となれば、国際的な猛反発は必至だ(2党解党は言うまでもない)。
オーストラリア国立大学のグレゴリー・レイモンドはツイッターでこう指摘した。
「民主主義への願いを押しつぶせば、タイはさらに深い泥沼にはまり、経済的に停滞した『のけ者国家』として中国への従属を強めるだろう」
From thediplomat.com