最新記事
サイバー攻撃

中国当局の支援受けたハッカー集団が米重要インフラに最大規模のスパイ活動 情報機関やMSが指摘

2023年5月25日(木)18時05分
ロイター
マイクロソフトのロゴ

西側の情報機関と米マイクロソフト(MS)は5月24日、国家支援を受けた中国のハッキンググループが通信や輸送拠点といった米国の重要インフラ機関にスパイ活動を行っていると発表した。写真はMSのロゴ。2016年6月、ロサンゼルスで撮影(2023年 ロイター/Lucy Nicholson)

西側の情報機関と米マイクロソフト(MS)は24日、国家支援を受けた中国のハッキンググループが通信や輸送拠点といった米国の重要インフラ機関にスパイ活動を行っていると発表した。

MSの報告書によると、戦略的に重要な米軍基地がある米領グアムも標的にしている。どの程度の数の機関が影響を受けたかは今のところ不明だが、判明している米重要インフラに対するサイバースパイ活動としては最大級だという。

米国家安全保障局(NSA)は、カナダ、ニュージーランド、オーストラリア、英国を含むパートナー国や米連邦捜査局(FBI)と協力していると表明した。

NSAのサイバーセキュリティー担当ディレクター、ロブ・ジョイス氏は声明で「PRC(中華人民共和国)の支援を受けたハッカー集団は、内蔵ネットワークツールを使い痕跡を残さない環境寄生型攻撃を行っている」と説明。このようなスパイ技術は「重要なインフラ環境にすでに組み込まれている機能」を使用するため、検知が困難になるという。

中国外務省の毛寧報道官は25日の定例会見で、ハッキング疑惑は機密情報を共有する米英など「ファイブアイズ」による「集団的偽情報キャンペーン」だと断じた。

地政学的理由から米国が仕掛けたものだとし、マイクロソフトのアナリストによる報告は、米政府が政府機関以外にも偽情報のチャネルを広げていることを示していると述べた。

その上で、どのような方法が使われようとも、米国が「ハッキングの帝国」であるという事実は変わらないと主張した。

MSは、「Volt Typhoon(ボルト・タイフーン)」という中国グループが少なくとも2021年から活動しており、通信、製造、公益事業、輸送、建設、海事、政府、情報技術、教育など多くの業界を標的にしてきたと指摘した。

同社のアナリストは、このグループが将来の危機の際に米国とアジア地域間の重要な通信インフラを混乱させる能力を開発しているという「中程度の確信」を持っていると述べた。

セキュリティー関連のアナリストは、中国が台湾に侵攻した場合、中国のハッカーが米軍のネットワークやその他の重要なインフラを標的にする可能性があると予想している。

グアムはアジア太平洋地域での紛争に対応する上で重要となる米軍施設を擁する。また、アジアやオーストラリアと米国を複数の海底ケーブルで結ぶ主要な通信ハブでもある。

オーストラリア戦略政策研究所のシニアアナリスト、Bart Hoggeveen氏は、海底ケーブルによってグアムは中国政府が情報を求めるターゲットになっていると指摘。「ケーブルは陸に上がると脆弱性が高まる」と述べた。

在ワシントン中国大使館からは今のところコメントを得られていない。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2023トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


社会的価値創造
「子どもの体験格差」解消を目指して──SMBCグループが推進する、従来の金融ビジネスに留まらない取り組み「シャカカチ」とは?
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米中古住宅販売、10月は3.4%増の396万戸 

ビジネス

貿易分断化、世界経済の生産に「相当な」損失=ECB

ビジネス

米新規失業保険申請は6000件減の21.3万件、4

ビジネス

ECB、12月にも利下げ余地 段階的な緩和必要=キ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中