最新記事
ロシア

ロシア、国家の求める「歴史認識」を強化 民主派拠点の人権センター、反体制派スパイとして閉鎖へ

2023年4月30日(日)19時43分
ロイター
書類を整理するサハロフセンターのヴィヤチェスラフ・バフミン代表

屋外に置かれたごみ箱の近くには、東西冷戦終結を描いたポスターが捨てられている。写真は書類を整理するサハロフセンターのヴィヤチェスラフ・バフミン代表。モスクワで撮影(2023年 ロイター/Evgenia Novozhenina)

屋外に置かれたごみ箱の近くには、東西冷戦終結を描いたポスターが捨てられている。建物内では職員が書類をより分け、本を積み重ねながら、四半世紀以上に及ぶロシアの人権活動を記録した資料を整理していた。

ロシア国内有数の民主派や人権運動の拠点の一つとなっているサハロフセンターでは、退去期限が5月2日に迫る中、センターの閉鎖準備が進められている。国内の反体制派スパイを意味する「外国代理人」に指定され、モスクワ市当局から立ち退き命令を受けたためだ。

今できるのは、より良い時代が来る時のために本や資料を保存しておくことだと、サハロフセンターのヴィヤチェスラフ・バフミン代表は言う。

「そのような時代がいつ来るかは、分からない」とバフミンさんは続けた。

ノーベル平和賞を受賞したソ連の反体制科学者、アンドレイ・サハロフ氏にちなんで名付けられたこの施設は、同氏の活動内容のほか、旧ソ連指導者スターリンによる大粛清と強制収容に関する資料を展示。民主派活動家の情報交換の場にもなっていた。

センターのある建物はこれまで、当局から無償で貸し出されていた。だが当局はいま、12月に改正された「外国代理人」への支援を禁止する法律を順守しようとしているだけだと主張している。

「外国代理人」という分類は、冷戦期に「汚名」とされていたもので、官僚体制や監査の対象となる人々に負担を強いる仕組みとなっている。

センターの近くには、サハロフ氏がかつて住んでいたモスクワのアパートに設立されたサハロフ博物館と資料館もあった。だが、2カ月前、これらの施設も同様に閉館した。

ロシア国内の人権団体を巡っては、既に著名な「メモリアル」と「モスクワ・ヘルシンキ・グループ」が解散させられている。ロシア司法省は毎週金曜日、新たな団体をブラックリストに追加している。

ロシア当局は、ウクライナ侵攻を巡って西側諸国と存亡がかかった対立を抱えているさなかにもかかわらず、人権活動家は非愛国的で、敵対する外国政府と密接な関係にあると非難。

プーチン大統領は連邦保安局(FSB)に対し、「社会を分断し、弱体化させようとする違法な活動を特定し、阻止する」よう自ら指示した。

農業
日本の技術で世界の干ばつ解決へ...ナガセヴィータの研究者に聞く「糖」の意外な活用法
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

尹大統領拘束令状の期限迫る、大統領警護処は執行協力

ワールド

米石油・ガス掘削リグ稼働数、4週連続横ばい=ベーカ

ビジネス

伊首相、トランプ氏と会談 米南部私邸を訪問

ワールド

米新車販売24年は約1600万台、HVがけん引 E
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2025
特集:ISSUES 2025
2024年12月31日/2025年1月 7日号(12/24発売)

トランプ2.0/中東&ウクライナ戦争/米経済/中国経済/AI......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ザポリージャ州の「ロシア軍司令部」にHIMARS攻撃...ミサイル直撃で建物が吹き飛ぶ瞬間映像
  • 2
    空腹も運転免許も恋愛も別々...結合双生児の姉妹が公開した「一般的ではない体の構造」動画が話題
  • 3
    ウクライナ水上ドローンが「史上初」の攻撃成功...海上から発射のミサイルがロシア軍ヘリを撃墜(映像)
  • 4
    青学大・原監督と予選落ち大学の選手たちが見せた奇跡…
  • 5
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 6
    地下鉄で火をつけられた女性を、焼け死ぬまで「誰も…
  • 7
    「妄想がすごい!」 米セレブ、「テイラー・スウィフ…
  • 8
    早稲田の卒業生はなぜ母校が「難関校」になることを…
  • 9
    肥満度は「高め」の方が、癌も少なく長生きできる? …
  • 10
    気候変動と生態系の危機が、さらなる環境破壊を招く.…
  • 1
    地下鉄で火をつけられた女性を、焼け死ぬまで「誰も助けず携帯で撮影した」事件がえぐり出すNYの恥部
  • 2
    真の敵は中国──帝政ロシアの過ちに学ばない愚かさ
  • 3
    JO1やINIが所属するLAPONEの崔社長「日本の音楽の強みは『個性』。そこを僕らも大切にしたい」
  • 4
    カヤックの下にうごめく「謎の影」...釣り人を恐怖に…
  • 5
    イースター島で見つかった1億6500万年前の「タイムカ…
  • 6
    早稲田の卒業生はなぜ母校が「難関校」になることを…
  • 7
    キャサリン妃の「結婚前からの大変身」が話題に...「…
  • 8
    ザポリージャ州の「ロシア軍司令部」にHIMARS攻撃...…
  • 9
    青学大・原監督と予選落ち大学の選手たちが見せた奇跡…
  • 10
    電池交換も充電も不要に? ダイヤモンドが拓く「数千…
  • 1
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 2
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊」の基地で発生した大爆発を捉えた映像にSNSでは憶測も
  • 3
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 4
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼ…
  • 5
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達し…
  • 8
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
  • 9
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式…
  • 10
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いす…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中