最新記事
アフリカ

スーダンからの自国民退避、大人数のアメリカは極めて困難

Sudan mass evacuation not feasible for U.S. citizens: ex-ambassador

2023年4月25日(火)17時01分
デービッド・ブレナン

軍用機でスーダンから隣国ジブチに退避したスペインの外交官と市民(4月24日) Spanish Defence Ministry/REUTERS

<これまで退避に成功してきたのは数十人や数百人単位のグループ。スーダンに残った1万6000人のアメリカ人を救い出すのは至難の技だ>

戦闘が続くアフリカ北東部スーダンの治安は改善の兆しがみえず、自国民の国外退避を目指す国々は「悲惨な状況」に直面している――前駐米スーダン大使が本誌にこう語った。

スーダンではスーダン国軍と準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」の戦闘が続いている。イスラム教のラマダン(断食月)明けの祝祭に合わせた停戦合意がなされたものの守られず、戦闘には「終わりが見えない」状況だと、2020~2022年まで駐米スーダン大使を務めたヌレルディン・サティは語る。

【動画】退避を急ぐ各国のレスキューオペレーション

「人道的停戦は部分的にしか守られず、双方によって破られた」とサティは指摘。それでも、一時的な戦闘停止の間に「首都ハルツームのアメリカ大使館職員をはじめ、ほかの複数の国の外交官や一部の市民は国外に退避できた」。

だが(約1万6000人のアメリカ人を含む)多くの市民はいまだ避難ができずにいる。居住地域の周辺では市街戦や空爆が続いており、ハルツーム国際空港も戦闘で被害を受けたからだ。

「このような状況では、大人数を退避させるのは不可能だ。比較的少人数であれば避難させられるかもしれないが、大人数の退避には、長期の停戦が実現するのを待つしかない」とサティは指摘した。

飛行場も飛行機も損壊

「ハルツームの空港はかなりの被害を受けて悲惨な状況だ。国軍とRSFが、空港にいた人々や航空機に乗って離陸を待っていた人々の安全をまったく考えず、無差別爆撃を行ったためだ」

「一部の航空機が大きな損傷を受け、乗客は急いでターミナルに避難しなければならなかった。これも、好戦的な連中が無責任な行動を取っていることの証だ」

米国防総省は23日、米軍がハルツームにあるアメリカ大使館の職員100人近くに加えて「同盟国の少人数の外交官」を現地から避難させたと発表した。

クリストファー・マイヤー米国防次官補(特殊作戦・低強度紛争担当)は、米国防総省は「今後も国務省と協力して、スーダンからの退避を望む米市民の支援を行っていく」と述べた。

「その一つの方法として考えられるのが陸路での国外退避で、この方法の方が実行可能かもしれない。そのため国防総省では現在、避難ルートの監視や脅威の検知を行うための情報収集、監視や偵察能力の使用を含むさまざまな行動を検討している」

本誌はスーダンに残っている米市民の現状について、米国務省にメールでコメントを求めたが、これまでに返答はない。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏とゼレンスキー氏が「非常に生産的な」協議

ワールド

ローマ教皇の葬儀、20万人が最後の別れ トランプ氏

ビジネス

豊田織機が非上場化を検討、トヨタやグループ企業が出

ビジネス

日産、武漢工場の生産25年度中にも終了 中国事業の
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口の中」を公開した女性、命を救ったものとは?
  • 3
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 6
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 7
    足の爪に発見した「異変」、実は「癌」だった...怪我…
  • 8
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 9
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 10
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 3
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 4
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 8
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 9
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 10
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中