習近平、訪中した仏マクロンを異例の厚遇 対米包囲網へのカードへ
米国の視点
米政府内では、中国によるフランスとの外交関係強化の取り組みが本格化するかどうか疑わしい面があるとみられている。
ウクライナ問題が決着した後なら、中国は対米関係悪化の埋め合わせとして欧州との経済的な接近につながるような外交戦略の再編に動くだろうが、現時点ではその公算は乏しい、と米政府の考えに詳しい複数の関係者は話す。
同関係者らによると、ウクライナ問題について欧州が中国に関与することには米政府は静観姿勢を貫いている。
もっともロジウム・グループのバーキン氏は、マクロン氏は今回の訪中で大した成果は得られなかったようだとの見方を示した。
「マクロン氏はウクライナ戦争における習氏の姿勢を変えさせることができると信じていたようだ。彼は習氏にデカップリング非難、大規模なビジネス代表団の同伴、中国の戦略的独立性支持の再確認といった一連の贈り物をした。それに対する大きな見返りはほとんどなしだ」という。
中国は、台湾やウクライナといった地政学問題に加え、先端技術の取引などでも米国が敷いた包囲網を打ち破る機会を虎視眈々と狙っている。
その一環として今年の外交関連予算は12.2%増加。過去数週間でシンガポール、マレーシア、スペイン、日本から指導者や高官も相次ぎ招いてきた。
3月には長年の宿敵だったサウジアラビアとイラン両国の外交関係正常化をおぜん立てして世界を驚かせ、中東和平の立役者も演じられるとアピールした。
欧州関係では、今後EUのボレル外交安全保障上級代表とドイツのベーアボック外相が訪中予定で、中国側の外交攻勢は続きそうだ。
中国人民大学欧州研究センターのワン・イウェイ主任は「中国と欧州は、システミックな競争相手ではなく、依然としてパートナーになり得る」と話している。
(Michel Rose記者、James Pomfret記者)