日米関係が今こそ「中東で」進化を遂げるべきこれだけの理由
Achieving a New Asia Pivot, in the Middle East
2014年5月、来日したネタニヤフ首相と握手を交わす外相時代の岸田 REUTERS-Eugene Hoshiko-Pool
<知日派の論客2人が、日本はアメリカとイスラエルと共に3カ国で協同すべきと提言。インド太平洋に続き、日本がリーダーシップをとるべき場所が中東である訳とは>
日米関係が、今こそ進化を目指すべき地域がある――中東だ。
去る3月、中国の仲介でサウジアラビアとイランが国交を再開したことや、中国の習近平国家主席によるモスクワ訪問は、いわゆる(相手方に出し抜かれて衝撃を受ける)「スプートニク・モーメント」だった。しかしそんな今だからこそ、日米関係が現代の地政学を動かす基軸になり得る大きな機運がめぐってきている。
日本はこれまで、イスラエルとの関係を劇的に進化させてきた。日本は多くのアラブ諸国と古くからの絆を維持しつつ、イスラエルを防衛や産業を含めた多岐にわたる技術面で戦略的パートナーとして受け入れようとしてきた。
アメリカにとって同盟関係の2つの要である日本とイスラエルは、今こそ中東でのパートナーシップを拡大するための新たな基盤を築くことができる。
中国は、アメリカの影響力が弱体化していると見られる現在の状況をフル活用しようとしている。しかし中国の猛攻は、脱炭素後の経済を見据えて新たな成長路線を模索しているアラブの同盟国にとって、米・日・イスラエルの協同路線の魅力を損なうものではない。
2020年のアラブ首長国連邦(UAE)とイスラエル間のアブラハム合意は、イスラエルとの協同に対する意欲の高まりを反映したものだ。
また、湾岸諸国の起業家たちにとっては、日本との協同にも大きな魅力がある。魅力とは主に、協同によってアジアの消費者への足掛かりを得ることと、アメリカ市場でより強固な足場を確保することだ。こうした二重の道筋を用意してくれる国は、日本をおいて他にはない。
しかし米日イスラエルの3カ国は、成熟した産業経済につきものの障壁にぶち当たっている。日本はかつてない高齢化社会を迎え、アメリカ社会は極端な経済格差と不公平を抱えており、イスラエルには政治的・社会的分断がはびこっている。
一方でこの3カ国の社会は、基本的には自由に基づき、集会と表現の自由が保障され、知的財産を尊重し、ルールに基づいた市場を保持している。
もし世界がカーボンニュートラル、もしくはカーボンネガティブな未来での成長を希求するのなら、要となる地域は中東である。米日イスラエルの協同は、共通の価値に基づく経済成長を生み出すための手がかりとなり得るだろう。