最新記事
日本外交

日米関係が今こそ「中東で」進化を遂げるべきこれだけの理由

Achieving a New Asia Pivot, in the Middle East

2023年4月1日(土)18時30分
ジョシュア・W・ウォーカー(ジャパン・ソサエティー理事長)、アンドリュー・M・サイデル(ダイナミック・ストラテジーズ・アジアCEO)

2014年5月、来日したネタニヤフ首相と握手を交わす外相時代の岸田 REUTERS-Eugene Hoshiko-Pool

<知日派の論客2人が、日本はアメリカとイスラエルと共に3カ国で協同すべきと提言。インド太平洋に続き、日本がリーダーシップをとるべき場所が中東である訳とは>

日米関係が、今こそ進化を目指すべき地域がある――中東だ。  

去る3月、中国の仲介でサウジアラビアとイランが国交を再開したことや、中国の習近平国家主席によるモスクワ訪問は、いわゆる(相手方に出し抜かれて衝撃を受ける)「スプートニク・モーメント」だった。しかしそんな今だからこそ、日米関係が現代の地政学を動かす基軸になり得る大きな機運がめぐってきている。

日本はこれまで、イスラエルとの関係を劇的に進化させてきた。日本は多くのアラブ諸国と古くからの絆を維持しつつ、イスラエルを防衛や産業を含めた多岐にわたる技術面で戦略的パートナーとして受け入れようとしてきた。

アメリカにとって同盟関係の2つの要である日本とイスラエルは、今こそ中東でのパートナーシップを拡大するための新たな基盤を築くことができる。

中国は、アメリカの影響力が弱体化していると見られる現在の状況をフル活用しようとしている。しかし中国の猛攻は、脱炭素後の経済を見据えて新たな成長路線を模索しているアラブの同盟国にとって、米・日・イスラエルの協同路線の魅力を損なうものではない。

2020年のアラブ首長国連邦(UAE)とイスラエル間のアブラハム合意は、イスラエルとの協同に対する意欲の高まりを反映したものだ。

また、湾岸諸国の起業家たちにとっては、日本との協同にも大きな魅力がある。魅力とは主に、協同によってアジアの消費者への足掛かりを得ることと、アメリカ市場でより強固な足場を確保することだ。こうした二重の道筋を用意してくれる国は、日本をおいて他にはない。

しかし米日イスラエルの3カ国は、成熟した産業経済につきものの障壁にぶち当たっている。日本はかつてない高齢化社会を迎え、アメリカ社会は極端な経済格差と不公平を抱えており、イスラエルには政治的・社会的分断がはびこっている。

一方でこの3カ国の社会は、基本的には自由に基づき、集会と表現の自由が保障され、知的財産を尊重し、ルールに基づいた市場を保持している。

もし世界がカーボンニュートラル、もしくはカーボンネガティブな未来での成長を希求するのなら、要となる地域は中東である。米日イスラエルの協同は、共通の価値に基づく経済成長を生み出すための手がかりとなり得るだろう。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

FRB、一段の利下げ必要 ペースは緩やかに=シカゴ

ワールド

ゲーツ元議員、司法長官の指名辞退 売春疑惑で適性に

ワールド

ロシア、中距離弾でウクライナ攻撃 西側供与の長距離

ビジネス

FRBのQT継続に問題なし、準備預金残高なお「潤沢
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中