ダビデ像はどうしてポルノじゃないの?
Florida principal's ousting over David statue causes stir in Italy
ポルノか芸術か(ダビデ像) Marta Pons Moreta-Shutterstock
<米フロリダ州で、ルネサンス彫刻の傑作「ダビデ像」の写真を小学生に見せた校長がクビになった。「ポルノ」を見せたと抗議があったからだ。母国イタリアは「あまりにも無知」とカンカンだ>
米フロリダ州の小学校の校長が、授業でイタリア・ルネサンスの巨匠ミケランジェロの彫刻「ダビデ像」の写真を見せたために辞職に追い込まれた。本家イタリアでは驚きと怒りの声が上がっている。
タラハシー・クラシカル学校のホープ・カラスキーヤ校長は、6年生向けの授業で生徒にダビデ像の写真を見せたところ、3人の保護者から苦情を受け、3月23日に辞職に追い込まれた。保護者の1人は、ダビデ像を「ポルノ」だと訴えたという。
このニュースを知ったイタリア・フィレンツェのダリオ・ナルデッラ市長は、「アートとポルノを混同するなんて馬鹿げている」とツイート。「アートは文明であり、それを教える者は誰であれ敬意をもって扱われるべきだ」
騒動はイタリアの日刊紙「コリエレ・デラ・セラ」でも報じられた。AP通信によれば、同紙は一面に、ダビデ像の性器を米市民の顔で隠して「恥」という言葉を添えた風刺画を掲載した。
ダビデ像が収蔵されているアカデミア美術館のセシリエ・ホルバーグ館長はAP通信に対して、「ダビデ像をポルノと考えるのは、聖書の内容や西洋文化、ルネサンス美術に対する理解が欠如しているということだ」と語った。彼女はダビデ像の「純潔さ」を見てもらうために、カラスキーヤや同学校の理事会、保護者や生徒を同美術館に招待したという。本誌はホルバーグにメールでコメントを求めたが、本記事の発行までに返答はなかった。
イタリアの極右vsアメリカの保守
イタリア側の反発は、アメリカの「文化戦争」が海外でどう受け止められているかを浮き彫りにしている。イタリアのジョルジャ・メローニ首相が率いる極右政党は、アメリカのキャンセル・カルチャー(公正さや多様性を求めて従来の文化や伝統を否定する動き)に対抗する手段の一環として、イタリアの歴史的な遺産を傷つける者を取り締まると宣言している。
一方のフロリダ州は、学校のカリキュラムにうるさいことで知られている。同州のロン・デサンティス知事(共和党)は2022年、小学校で性自認や性的指向を議論することを禁じる法律に署名。さらに幼稚園から高校3年生までの授業で、人種差別は制度的にアメリカ社会に組み込まれているとする「批判的人種理論」を教えることを禁止する法律も成立させた。