韓国、宙を飛んだ暴走SUV 運転ミスか車両の欠陥か、立証義務は誰にある?
暴走したSUVは宙を飛び、ほかの自動車の間をすりぬけるようにして…… SBS / YouTube
<高齢者ドライバーの運転する自動車が暴走。果たして事故原因は......>
昨年末、韓国の北東部にある江原道江陵市(カンウォンド・カンヌン)で自動車の暴走事故が発生。運転していた60代女性A氏が重傷、同乗していた12歳の孫が死亡した。
これだけなら、日本でもよくある高齢者による暴走事故として片付けられるものだが、亡くなった子供の父親が事故車両の欠陥疑惑を提議。PL法改正を求めた請願が韓国国会も巻き込んだ議論に発展しようとしている。ソウル新聞など韓国主要メディアが報じた。
孫を乗せた帰宅途中、突然クルマが......
2022年12月6日午後4時ごろ、江陵市でA氏(68)が運転したSUV乗用車が暴走、道路脇の地下通路に落下し大破する事故が起きた。後部座席に同乗していたA氏の孫(12)が心肺停止状態で病院に運ばれたが亡くなった。 A氏も大きな怪我をして病院で治療を受けた。
当時A氏が運転していたSUVは、交差点の前で前方の車に衝突後、速度を上げて暴走した。A氏は「どうして動かないの!? 大変!」と言って、孫の名前を叫んだが、SUVはその後も速度を落とさず600mほどをさらに走行。周囲の車を避けながら走っていたA氏のSUVは4車線の道路を飛び越えた後、地下通路に転落した。
その後、警察はA氏を交通事故特例法違反により刑事立件したが、家族たちはA氏に罪がないことを訴える嘆願書を提出。また事故の原因は「車両の欠陥による急発進だ」として、2月にはメーカーを相手に民事訴訟を起こした。
PL法改正を請願
今回の事故で12歳の息子を失ったイ・サンフン氏は2月23日、「欠陥原因立証責任転換製造物責任法」改正のため、国会の「国民同意の請願」運動を開始した。これは登録から30日以内に5万人以上の同意を受ければ国会で審議されるというものだ。
イ・サンフン氏は「自動走行システムが実用化され電動化される自動車では、車両の問題による急発進事故が起きる可能性が常にある。ソフトウェアの欠陥は事故発生後にその痕跡を残さないため、その立証が事実上不可能だ。ところが現行の製造物責任法(PL法)は急発進が疑われる事故が発生しても、車両に欠陥があることを非専門家である運転者や遺族が立証するように規定している」と車両に欠陥があったとしても立証することの難しさを訴えた。
そして「このような不合理で不公正な製造物責任法条項を、少なくとも急発進が疑われる事故では、自動車メーカーが急発進の欠陥がないことを立証するように立証責任を転換させる法改正が緊急に必要だ」と請願趣旨を説明した。