摘発すべきはギャングとエリート──国家を食い物にしてハイチを「崩壊国家」に追い込む悪い奴らの実態
HAITI’S HOMEGROWN ILLS
それらの緊急支援に続いて警察官の募集と訓練教育の支援、地域ぐるみの防犯体制の構築や刑法改正、さらにエリートが犯罪集団と手を組む現状を打破するには汚職一掃や透明性確保のための支援も必要になる。
武器と麻薬の密輸対策では、カリブ共同体や米州機構などの組織が地域的な捜査協力の枠組みづくりを進めれば、情報共有や技術支援などで大きな成果が期待できる。
とはいえ、ハイチが国家破綻の危機を克服するには、まともな統治と言わないまでも、せめてそれに近いものを復活させることが不可欠だ。現時点では、ハイチには民主的な選挙で選ばれた公職者は一人もいない。大統領暗殺事件後、首相に就任したアリエル・アンリは秩序回復のために選挙を行うと約束した。
だがこの約束はいまだ実現していない。2月に暫定選挙管理委員会が発足したが、年内に選挙が実施される見込みは薄い。仮に選挙が行われたとしても、ギャングが支持する候補に入れなければ殺されかねない状況ではいったい何人が投票所に足を運ぶだろう。
重武装したギャングが相手では秩序回復は困難を極める。最終的にはハイチの人々が主体にならなければ長期的な問題解決は望めないが、それに道筋を付けるためにも国際社会の支援が不可欠だ。
ハイチのエリートに「腐れ縁」を断つよう圧力をかけなければ、悪の集団はのさばり続ける。彼らの懐に流れ込む潤沢な資金を断つこと。それが先決だ。