摘発すべきはギャングとエリート──国家を食い物にしてハイチを「崩壊国家」に追い込む悪い奴らの実態
HAITI’S HOMEGROWN ILLS
国連をはじめ、アメリカやカナダが犯罪組織への関与や支援が疑われる現役および元政府高官に対する制裁を発表してきたが、その対象者は悪徳エリートのごく一部にすぎない。
例えば、国連安全保障理事会の制裁対象者は、革命を標榜するギャング連合G9の指導者ジミー・シェリジエ(通称バーベキュー)だけだ。これに対して、アメリカ、イギリス、カナダは、もう少し踏み込んで、ハイチのエリート層にわずかながらメスを入れている。
アメリカとカナダは、ユーリ・ラトルトゥ元上院議長とジョセフ・ランベール前上院議長に渡航禁止などの制裁を科している。
カナダは、ミシェル・マテリ元大統領と2人の元首相ローラン・ラモースとジャンアンリ・セアンも対象にしている。
さらに米財務省は、国際的な麻薬密売に関与しているとしてロニ・セレスタン上院議員らのアメリカにおける資産を凍結した。カナダはハイチ最大の富豪ジルベール・ビジオなど、財界人にも制裁を科している。
国際NGOトランスペアレンシー・インターナショナルの2022年汚職腐敗度指数(CPI)で、ハイチは世界180カ国中171位、世界銀行が各国のビジネスのしやすさをランク付けしたビジネス環境ランキング(20年)では、190カ国中179位だった。
米国から大量の銃が流入
国際的な制裁がこれほどの腐敗をどのくらい縮小し、国内の混乱収拾にどのくらい役に立つかは疑わしい。なにしろ現在のハイチでは、重武装したギャングがそこらじゅうをうろつき、人々を恐怖に陥れて、人道危機をますます悪化させているのだ。
G9をはじめ、G-PEP、400マウォゾといったギャング連合は、首都ポルトープランスの4分の3など主要都市を支配下に置いている。
大小の縄張り争いは日常茶飯事で、警察がターゲットになることも少なくない。殺人や誘拐もしょっちゅう起こる。このためポルトープランスでは、22年だけで10万人近くの住民が逃げ出した。
もともと治安が悪かったハイチの状況がここまで悪化した背景には、銃器や弾薬の大量流入がある。どれも国内では製造されていないから、ほぼ全てが外国で調達され、違法に持ち込まれたものだ。ハイチとアメリカの当局によると、特に最近は大口径の銃器が増えている。