オスカー受賞作『ナワリヌイ』への批判記事はAI生成ですぐバレた
Navalny Film 'Debunk' Partly Written Using AI, Investigators Claim
妻ユリアと政治集会を率いたナワリヌイ。今はロシアの獄中で、死にかけていると家族や支持者は訴える(写真は2019年) Tatyana Makeyeva-REUTERS
<ロシアの野党指導者ナワリヌイのドキュメンタリーの信用を貶めようとした極左の記事は、AIのでっち上げを間に受けたものだった>
アメリカを拠点とする極左ニュースサイト「グレイゾーン」は、アカデミー賞受賞ドキュメンタリー『ナワリヌイ』の「嘘を暴く」記事を公開した。だが同作品に関わった調査報道グループは、この「暴露」記事は部分的に、AIによるテキスト自動生成機能によって書かれており、存在しないURLが情報源にされていると指摘した。
3月12日の夜、ハリウッドで開催されたアカデミー賞授賞式で、『ナワリヌイ』が長編ドキュメンタリー賞を受賞した。ロシアの著名な反体制派指導者アレクセイ・ナワリヌイの毒殺未遂事件と2021年にモスクワに戻った際の投獄を描いた作品だ。
この作品はオランダの調査報道グループ「ベリングキャット」による調査に基づいている。同グループは、2020年8月にナワリヌイを神経ガス「ノビチョク」で毒殺しようとした犯人を暴く調査活動をしている。ナワリヌイは、ロシア政府が毒殺を命じたと主張している。
グレイゾーンはアカデミー賞授賞式の翌日(3月13日)、ジャーナリストのルーシー・コミサールによる 「オスカー受賞のドキュメンタリー『ナワリヌイ』は偽情報がいっぱい」という記事を掲載した(現在は修正済み)。
アメリカ人ジャーナリスト、マックス・ブルメンタールが設立したこのニュースサイトは、ロシアのプロパガンダに寄り添うような記事を掲載していると悪評高い。
情報の出どころが問題
コミサールは記事の中で、毒殺未遂事件当時、ナワリヌイはすでに体調を崩しており、既往症もあったことを示唆した。
ベリングキャットの創設者エリオット・ヒギンズは、14日にツイッターにこの記事を批判する長文を投稿。「情報の出典に大きな問題がある」と述べた。「コミサールの記事はAIの支援によるものだが、このAIはあまり賢くないようだ」
ヒギンズは、コミサールが記事を書き上げる際に利用したのは、「ライトソニック(Writesonic)」というAIライティングツールだと指摘した。
「記事中の出典リンクのいくつかはPDFだが、そのなかには記事の筆者がAIライティングツール『ライトソニック』に尋ねた回答らしいものが含まれている。それが記事中の主張の根拠として使われている場合もある」とヒギンズは解説。例として、記事中で主張されているナワリヌイの病歴が、ライトソニックに設定した質問に対する回答をもとにしていることをあげた。
さらに、この記事には架空の「情報源」も含まれている、とヒギンズは続けた。
「筆者はAIに情報の提示と共にその情報源へのリンクを求めたようだが、掲載されているリンクにはちょっと問題がある。たとえば、ナワリヌイとユリア・スクリパリに関する記述について、2014年のガーディアンの記事のURLをあげているが、それを見れば何が問題かはすぐにわかるだろう」