最新記事
教育費

子ども2人を大学に通わせられる世帯の約半数は年収1000万円以上

2023年3月8日(水)14時30分
舞田敏彦(教育社会学者)
大学卒業

日本では教育費の負担が両親に重くのしかかっている michaeljung/iStock.

<日本で子ども2人を下宿させて私大に通わせると年間500万円近くかかることになる>

昨年の出生数はとうとう80万人を下回った。とどまることのない少子化だが、夫婦が出産をためらう理由として大きいのは、教育費の高さだ。1人ならまだしも、2人目以降の出産はためらわれる「2人目の壁」も指摘されている。これを受けて政府は、子が多いほど税負担が軽くなる「N分N乗方式」なる税制度を検討している。

昔は、子どもは労働力としての性格が強く、出産は働き手を確保する意味合いもあり、低所得層ほど子どもが多い「貧乏人の子だくさん」と言われたりしていた。しかし今はそうでなく、子どもはカネのかかる存在だ。自立のためのハードルは高くなり、20歳過ぎまで学校教育を受けさせるのが常態化している。18歳以降の高等教育では私立校が多く、学費も高い。夫婦が「2人目の壁」を意識するのは当然だ。

実際、2人の子を大学に行かせるのは容易ではない。2017年の総務省『就業構造基本調査』によると、2人の子がいて両方とも大学ないしは大学院に行かせている世帯は約10万世帯。<図1>は、これらの世帯の年収分布図だ。

data230308-chart01.png

9万9100世帯のうち、4万5900世帯(46.3%)が年収1000万円を超えている。中央値は966万円で、東大生の家庭とほぼ同じだ。子を2人大学にやるのは並大抵でないことが分かる。

日本学生支援機構の『学生生活調査』(2020年度)によると、私大の下宿生の年間学費は132万円、生活費は109万円、合算して241万円だ。2人の子を下宿させて私大に通わせると500万円近くかかることになる。こう見ると、上記の結果も頷ける。

18歳の子がいる年代の家庭の平均年収(700万円ほど)では、子を2人大学にやるのは簡単ではない。2人の子がいても進学させるのは1人だけで、もう1人(特に女子)には諦めてもらう、という話はよく聞く。それでは忍びないので、子は1人までと考える家庭も多くなるというわけだ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米民主党主導州、トランプ政権の教育省廃止の停止求め

ワールド

EU産ワインに200%関税も、トランプ氏が対抗措置

ワールド

ウクライナ停戦巡る米提案に同意、紛争の主要因排除の

ビジネス

米の年内利下げ、2回に予想引き上げ=バークレイズ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本人が知らない 世界の考古学ニュース33
特集:日本人が知らない 世界の考古学ニュース33
2025年3月18日号(3/11発売)

3Dマッピング、レーダー探査......新しい技術が人類の深部を見せてくれる時代が来た

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦している市場」とは
  • 2
    【クイズ】世界で1番「石油」の消費量が多い国はどこ?
  • 3
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は中国、2位はメキシコ、意外な3位は?
  • 4
    白米のほうが玄米よりも健康的だった...「毒素」と「…
  • 5
    SF映画みたいだけど「大迷惑」...スペースXの宇宙船…
  • 6
    【クイズ】ウランよりも安全...次世代原子炉に期待の…
  • 7
    「若者は使えない」「社会人はムリ」...アメリカでZ…
  • 8
    うなり声をあげ、牙をむいて威嚇する犬...その「相手…
  • 9
    「トランプの資産も安全ではない」トランプが所有す…
  • 10
    『シンシン/SING SING』ニューズウィーク日本版独占…
  • 1
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 2
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦している市場」とは
  • 3
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は中国、2位はメキシコ、意外な3位は?
  • 4
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題…
  • 5
    うなり声をあげ、牙をむいて威嚇する犬...その「相手…
  • 6
    白米のほうが玄米よりも健康的だった...「毒素」と「…
  • 7
    「これがロシア人への復讐だ...」ウクライナ軍がHIMA…
  • 8
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 9
    【クイズ】ウランよりも安全...次世代原子炉に期待の…
  • 10
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアで…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 4
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 5
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 6
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
  • 9
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 10
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中