プーチン、国内の情報統制に失敗──政府関係者が認める
Kremlin Admits Putin Losing Control of Russia's War Narrative — ISW
クレムリンで国際女性デーのスピーチをするプーチン(3月8日) Sputnik/Ilya Pitalyov/REUTERS
<国内の「情報空間」を思い通りに動かしたいプーチンだが、政府の内部対立で「スターリン時代のようは手」は打てなくなっている>
アメリカのシンクタンク、戦争研究所が3月11日に出したレポートによれば、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領がウクライナ侵攻を巡る国内世論をコントロールしきれなくなっていることを同国政府関係者が認めたという。
プーチンの言う「特別軍事作戦」つまりウクライナに対するロシア軍の侵攻が始まって早1年。ロシアとしては短期間のうちに勝利を収めるつもりが、西側の支援を受けたウクライナ軍が予想を上回る抵抗を見せたことで思うような戦果を上げられず、政府内では侵攻を巡って内部対立も起きていると言われる。
ロシア政府は、政府に都合のいい見方をニュースサイトやソーシャルメディアなどの「情報空間」を使って拡散しようとしてきた。ロシアは以前からこの手法を駆使してきたが、侵攻開始後は、国内の政府批判に激しい弾圧も加えてきた。
だが戦争研究所のレポートによれば、プーチンによる情報統制にほころびが見えてきた可能性があり、そのほころびを修復するのは容易なことではないかも知れない。
レポートによれば、ロシア外務省の報道官マリア・ザハロワは先ごろ、あるフォーラムに出席し、「情報と認知戦の実際的、技術的な側面」について話をした。
新たなプロパガンダ機関を作れない理由
ザハロワは、プーチン周辺で内紛が起きていることや、プーチンが「ロシアの情報空間に対する中央からのコントロールを手放した」ことを認めた。
「パネルディスカッションでザハロワは、スターリン時代に情報を中央でコントロールしていたソビエト情報局に匹敵するものを設立することは今のロシア政府には不可能だと述べた。政府内の『エリート』の間で意見が対立しているからだ」と軍事研究所はレポートで伝えている。
戦争研究所はレポートで、ザハロワの発言はロシア政府が世論を制御しきれなくなっているとの見方を「裏付ける」ものだと述べた。
「この発言は、いくつかの見方を裏付けている。まず、プーチンの主要な側近たちの間で対立が起きているというもの。そして時間の経過とともに、ロシアの情報空間をコントロールする力がプーチンから他の人物や機関の手に渡ってしまったというもの。そして今のプーチンにはそのコントロールを取り戻すことも不可能らしいというものだ」とリポートには書かれている。