最新記事

ウクライナ情勢

ロシア侵攻から1年 ゼレンスキーが見せた「想定外」の徹底抗戦

2023年2月20日(月)10時15分
ゼレンスキー大統領

その頑張りはいつまで続くのか。ウクライナのボロディミル・ゼレンスキー大統領(写真)は毎晩、戦意高揚に向けたビデオ演説を配信している。ヘルソンで2022年11月撮影。ウクライナ大統領府提供(2023年 ロイター)

その頑張りはいつまで続くのか。ウクライナのボロディミル・ゼレンスキー大統領は毎晩、戦意高揚に向けたビデオ演説を配信している。侵略者ロシアとの戦いの渦中にある将兵らを鼓舞し、世界の関心を自国の苦境に繋ぎ止めようと努めている。

ゼレンスキー氏はこれまで、西側諸国から様々な武器供与を勝ち取ってきた。当初西側は、殺傷能力のある兵器は何であれ供給しない構えだったのが、最近ではウクライナによる反撃を後押しし得る主力戦車の提供を決断。タブーは次々に打破されてきた。

2019年に就任した現在45歳のゼレンスキー氏に、諦める気配はまったくない。

だが、それは相手も同じだ。2022年2月24日にウクライナに対する「特別軍事作戦」を開始したロシアのプーチン大統領は、長期戦に備えているように見える。

大化けしたゼレンスキー

ロシア軍部隊が国境を越えてなだれ込んで来たとき、ゼレンスキー大統領の「大化け」を予想した人はほとんどいなかった。テレビで活躍するコメディー俳優出身のゼレンスキー氏だが、当時は政治腐敗のまん延と経済の不振、ガバナンスの欠如に対する国民の怒りが高まり、支持率は低下していた。

侵攻前、ロシアがウクライナとの国境に部隊を集結さると、ウクライナから退去しようとする諸外国の大使館や企業が相次いだ。ゼレンスキー大統領はウクライナ経済に打撃を与えているとしてこうした動きを批判しており、少なくとも表向きは本格的な侵攻の可能性は低いと考えているように見えた。

「ゼレンスキー」はいまや世界中で誰もが知る名前となり、ウクライナの抵抗の象徴となっている。国内では支持率が約3倍に上昇し、異例の安定を見せている。

厳重に警備された大統領府で初対面の来客を迎えるときの気さくで温和な人柄に加え、王族に接するときも前線の兵士を視察するときも同じカーキ色の軍用Tシャツ姿で通すゼレンスキー氏の姿は、安定感と不動の意思の強さを印象付けている。

とはいえ、課題はまだ山積している。ロシア軍を押し戻すためには西側の新鋭戦闘機が必要だと主張しているが、まだ確保できていない。欧州連合(EU)早期加盟という公約も実現していない。軍事同盟である北大西洋条約機構(NATO)への加盟も、実現の可能性は見えていない。

ときおり目の下に隈を作り、疲れた表情を見せるとはいえ、ゼレンスキー氏に気力が衰えはみられない。1月には、政治腐敗スキャンダルに対する市民の怒りを鎮めるべく、内閣改造に踏み切った。

キーウの政治アナリスト、ボロディミル・フェセンコ氏は、「ゼレンスキー氏は多くの人々を驚かせた。彼のリーダーシップを過小評価していた」と述べ、プーチン氏も相手を見誤ったと語る。

「プーチン氏は本格的な戦争ではなく、限定的な特別作戦のつもりで準備していた。ゼレンスキー大統領とウクライナ軍は弱体で、長期的な抵抗は無理だろうと考えていたからだ。その判断は誤りだった」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中