留学中の中国人学生も怯える、中国共産党の監視の目...国外にいても党の支配からは逃れられない
NOWHERE TO HIDE FROM THE CCP
Bjorn Bakstad-iStock
<オーストラリアから祖国の民主化を訴える中国人学生の大きすぎる代償>
オーストラリアの大学で学ぶ中国人留学生のローラ(仮名)には、同胞の留学生が中国共産党に忠誠を誓っているかどうかを簡単に判別できる方法があるという。「台湾を国だと『うっかり』口にする。反論されなければ、香港人の勇敢さについても触れてみる。それでも大丈夫なら、相手が仲間だと分かる」
ローラのような民主主義を支持する中国人留学生は、周囲の同胞の目を警戒しなければならない。ナショナリストの留学生仲間から嫌がらせを受けたり、祖国の当局に通報される恐れがあるためだ。ローラは自らの素性が明らかになれば、家族が「逮捕されて刑務所で拷問を受けるだろう」と語る。
彼女と友人たちは大学のキャンパスに共産党批判のポスターを貼って回るが、翌日には撤去されたり破られていたりする。「アイデアは壊せない。アイデアは弾丸にも勝つ」と書かれたポスターに、共産党支持のある学生は「だが私はおまえの口を引き裂ける」と落書きした。習近平(シー・チンピン)体制に反対する者を抑え付けようという意図が透けて見える。
一方、シドニーの大学で学ぶアーロンのように変装によって身を守る者もいる。アーロンは昨年12月、新疆ウイグル自治区ウルムチで発生した高層住宅火災の犠牲者を悼むためにシドニーで行われたキャンドルナイトに参加。集まった民主派学生らは「中国共産党支持のナショナリスト」に卵や石を投げ付けられた。
アーロンはネット上では偽名を使っているが、この抗議運動では「くまのプーさん」のコスチューム姿で注目を浴びた。習と見た目が似ていることから、プーさんは(言論統制を象徴する白い紙と並んで)中国共産党への反発を表す世界的なシンボルとなっている。だがかわいいコスチュームの下で、アーロンは自分の行動が自身や家族に危険をもたらすのではないかと恐れていた。「中国共産党に素性を特定されたら、私は刑務所に送られる」
大学は留学生の保護に及び腰
オーストラリアの大学にとって、中国人留学生の安全と、彼らが政治的な発言をする自由を守るのは簡単な話ではない。その一因は、同国の教育制度における中国人留学生の特別な位置付けにある。オーストラリアでは教育は重要な輸出品で、自国の学生の約4倍の授業料を払ってくれる留学生は貴重な収入源だ。2019年に中国人留学生がオーストラリアの大学にもたらした収入はおよそ80億ドルに上る。