この悲しい戦争が教えてくれる5つの教訓
LESSONS FROM YEAR ONE
大統領がゼレンスキーでなかったら、国際社会はこれほど支援しなかったかもしれない LUDOVIC MARINーPOOLーREUTERS
<犠牲から得られた知恵を未来に生かせ、世界中の指導者と市民が学べるこれだけのこと>
戦争が残酷であることは確かだが、そこから学べるものは少なくない。戦いによる犠牲から得られた知恵を未来に生かせることもある。
開始から1年が過ぎたウクライナ戦争から、世界中の指導者と市民が学べる5つの教訓を挙げてみる。
■教訓1 指導者は判断を誤る
今となっては、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が判断を誤ったことは明らかだ。侵攻してもウクライナはまともに抵抗できないと、プーチンは決めてかかっていた。ロシア軍の士気とウクライナ軍の粘り強さを見誤っており、戦争によってエネルギー資源の供給が滞っても西側諸国が代替策を見つけることを計算に入れていなかった。
だが、判断ミスを犯したのは西側も同じだ。ロシアがウクライナに侵攻する可能性は何年も前から指摘されていたのに、まともな対策を取らなかった。その一方で、対ロ制裁の効果を過大評価していた。さらには、ウクライナを自陣に引き込もうとする西側陣営にロシアがどれだけ反発するかを甘くみていた。
■教訓2 侵略に対して国々は団結する
この戦いで改めて浮き彫りになったが、国際社会は明白な侵略行為には団結して対抗する。プーチンはこれにも気付かず、NATOがここまで結束するとは予想していなかった。
ウクライナの後ろには、GDPを合計すればロシアの20倍近い支援国がいる。しかも、これらの国々は世界で最も高度な兵器を製造している。
プーチンが楽勝を見込んでいた戦争には、終わりが見えない。だが戦いがどのような形で終結しても、そのときロシアは侵攻前よりはるかに弱体化している。
侵略を仕掛けられた国がそれを押し返そうとするのは、侵略した側の国が味をしめるのを懸念するためだ。その心配は時として的外れになる。実際には侵略を仕掛けた国が、現状をいくらか変えられたというだけで満足することもある。
だが、本当にそれで済むと確信できない他の国々は、結束して事態の悪化を防ぐ。この流れが顕著に表れたのが、スウェーデンとフィンランドが長年にわたる中立の立場を捨ててNATO加盟の道を選んだことだ。
■教訓3 最後まで油断禁物
多くのアメリカ人は一般的に、戦争に対して短期決戦で勝利を収めるイメージを抱いている。だが、この戦争は違う。ウクライナは当初の攻撃に耐え、直ちに政権を崩壊させるというロシア側の目標も阻止した。侵攻から1年が過ぎた今も、両国の軍は熾烈な戦いを続けている。