「軍事力増強」日韓はどこへ
EAST ASIA ARMING UP
日本は自らの軍事力と日米安保の強化を目指す(22年5月23日、訪日したバイデン大統領と岸田首相) EUGENE HOSHIKOーPOOL/GETTY IMAGES
<中国と北朝鮮の軍拡で日本と韓国が防衛力強化へ、アメリカの傘の下にいた両国が「自立」を目指し始めたが>
ウクライナの戦争は引き続き大々的に報道されているが、東アジアでも新たなホットスポットが生まれつつある。日本政府は防衛費を5年間で倍増する方針を決め、アメリカ製長距離巡航ミサイル「トマホーク」の導入を目指すなど、反軍事の伝統から大きく舵を切っている。韓国では大統領が、核兵器を生産できる能力に言及した。
こうした動きの背景には、中国と北朝鮮が好戦的な態度を強めていることもあるが、主な原動力はロシアのウクライナ侵攻だ。日本と韓国ではタカ派が長年、不満を募らせてきたが、ここにきて大胆な発言と積極的な政策に転じつつある。
スタンフォード大学講師で現在、日本で取材をしている東アジア研究者のダニエル・スナイダーは「ウクライナ戦争が全ての変化の枠組みになっている」と語る。「攻撃的な武力行使はまた起こり得る、自分のところでも起こり得るという考え方に関心が高まっている」
昨年12月、日本政府は9年ぶりに「国家安全保障戦略」を改定し、防衛費と関係費を合わせた安全保障関連費を5年間でGDP比1%から2%に倍増する方針も決めた。
さらに、中国や北朝鮮のミサイル発射拠点を標的にできるトマホークの購入費として、約2100億円を2023年度予算に計上。これにより、日本は初めて敵基地攻撃能力(反撃能力)を保有することになる。また、沖縄に駐留する米海兵隊を改編して機動力の高い「海兵沿岸連隊」を配備する計画を、日米の閣僚協議で確認している。
日本は14年に憲法9条の「解釈を変更」して、自衛隊が同盟国の防衛に協力することを可能にした。自衛隊は約25万人の現役隊員を擁する大規模な軍隊だが、1945年の終戦以降、日本の「軍隊」が怒りに任せて発砲したことは一度もない。武器の輸出も認めていない。
国防に関して日本が新しい姿勢を示し始めたのは、安倍晋三が首相だったおよそ10年前からだ。拡大する中国と北朝鮮の脅威を抑止して、必要になれば対抗しなければならないという認識が徐々に高まっていた。
ロシアがウクライナ侵攻に向けて国境付近の兵力を増強するなか、21年10月に就任した岸田文雄首相の下でこうした変化が加速し、政策として固まりつつある。岸田は今年1月に訪米してジョー・バイデン米大統領と会談した際も、日本の安全保障戦略の転換を強調した。
アメリカは守ってくれるのか
新しい国家安全保障戦略で日本は、「ロシアによるウクライナ侵略により、国際秩序を形作るルールの根幹がいとも簡単に破られた」と非難。「同様の深刻な事態が、将来、インド太平洋地域、とりわけ東アジアにおいて発生する可能性は排除されない」とする。