比マルコス大統領が中国大使召還 艦船へのレーザー照射問題で親中路線転換へ
フィリピン沿岸警備隊にレーザー照射をしてきた中国海警局の船舶 REUTERS
<習近平との1月の合意から一転、米との連携強化へ>
フィリピンのマルコス大統領は2月14日に在フィリピン中国大使を大統領官邸へ召喚し、13日に公表された中国海警局船舶によるフィリピン沿岸警備隊艦船へのレーザー照射事案に関して遺憾の意を示した。
通常外国の大使を召還して遺憾の意や抗議を示すのは外相と相場が決まっているが、元首である大統領が召喚して直接遺憾の意を示すのは異例で、それだけフィリピン政府がこのレーザー照射問題を重く見ていることの表れといえる。
「中国による頻繁で集中的な行為」に懸念伝える
マルコス大統領は中国の黄渓連大使をマニラのマラカニアン大統領公邸に呼び出してレーザー照射が「極めて重大であり遺憾である」との懸念を伝えた。
大統領府はさらに黄大使に対してマルコス大統領から「最近の比沿岸警備隊や比漁船に対する自国の海洋権益内で発生している中国による頻繁で集中的な行為に対して重大な関心と懸念がある」と伝えたことを明らかにしている。
これに対し在比中国大使館は声明を発表しその中で「黄大使とマルコス大統領は互いに対話とコミュニケーションを通じて両国の海洋問題を的確に扱うとの観点から意見を交換した」と述べるに留まった。
比政府はすでに中国政府に抗議の意味を込めた遺憾の意を伝達しているが、中国外務省は「中国の領海に比艦艇が進入したことがそもそもの原因である」と一方的に正当化し、レーザー照射に関しても「現場での対応は抑制的であった」と表明。フィリピン側の怒りにさらに油を注ぐ態度を示している。
1月のマルコス=習近平会談では
フィリピン外務省は1月にマルコス大統領が訪中して習近平国家主席と会談した席では、南シナ海問題については「友好的な協議を通じて対処する」と外交的解決の道筋を探ることで合意していたことを改めて確認している。
それに反するような今回の中国によるレーザー照射について、フィリピン側は「中国によるこうした攻撃的な挑発行動は憂慮される問題であり失望している」と不信感を露わにしている。