2人の人生を分けたもの──「性的対象」だったブルック・シールズとパメラ・アンダーソン
Another Wake-Up Call
女であるがゆえに理不尽な闘いを強いられてきたブルック・シールズ(左)とパメラ・アンダーソンのドキュメンタリーは不都合な真実を突き付ける PHOTO ILLUSTRATION BY SLATE. PHOTOS VIA ABC NEWS STUDIOS/HULU AND NETFLIXーSLATE
<話題となった女性の半生を振り返るドキュメンタリー映画が増えている。セレブの過去が物語る性搾取の闇と、社会に潜む女性蔑視の実態とは?>
何かと話題になった女性の半生を振り返る──このところ、そんな趣向のドキュメンタリーが目立つ。対象は女優でも歌手でも、モデルでもいい。自分の言動で騒ぎを引き起こした人もいれば、たまたま脚光を浴びてしまっただけの罪なき傍観者もいる。
いずれにせよ、ブリトニー・スピアーズと父親の確執に焦点を当てた『フレーミング・ブリトニー・スピアーズ』(2021年)が公開されて以来、私たちは他人のプライバシーに土足で踏み込む罪を喜々として繰り返す一方で、そうした罪を作品化して再検証することにも熱心になっているようだ。
今年も、このジャンルの話題作が2つ。「主役」はブルック・シールズとパメラ・アンダーソンだ。どちらもスピアーズ同様、幼い頃から性的な存在として扱われてきた。
1月のサンダンス映画祭でお披露目された『プリティ・ベビー ブルック・シールズ』(ラナ・ウィルソン監督)は2部構成で、今春にはHuluで配信予定。一方の『パメラ・アンダーソン、ラブ・ストーリー』(ライアン・ホワイト監督)は、1月末からネットフリックスで独占配信が始まっている。
この2人には共通点がたくさんある。メディアに翻弄され搾取されてきた、性的暴行のトラウマを抱え、流産を経験し、親しい人に支配されてきた......でも改めて並べて見ると、際立つのは2人のたどった道の違いだ。
ブルック・シールズは若い頃、母親テリ・シールズに支配されていた。まずはアイボリーせっけんの広告で、赤ちゃんモデルとしてデビュー。12歳で映画『プリティ・ベビー』(1978年)に主演し、幼い売春婦の役で裸になった。これで人気に火が付いたが、児童ポルノではないかという議論も巻き起こした。
14歳ではカルバン・クラインのジーンズの広告(「私とカルバンの間に何があると思う? 何もないの」)に出演。孤島が舞台の青春映画『青い珊瑚礁』は14歳、恋愛映画『エンドレス・ラブ』は15歳の時に撮影された作品で、どちらにも複数のヌードシーンがあった。
「あの頃から、私は割り切るってことを知っていた」。当時の自分が演じた役柄について、シールズはそう言っている。「生き残るためにね」