残酷な内戦と大地震に揺さぶられて...シリア援助に見る国際社会の重要な課題
Trapped by Assad
反体制派支配地域の都市ジャンダリスで救助された少女(2月6日) KHALIL ASHAWIーREUTERS
<深刻な人道危機のさなか、反体制派地域を襲った天災、忘れられた被災者を今すぐ援助するために>
2月5日夜、内戦が比較的落ち着いているなか、シリア北部の住民は眠りに就いた。翌日早朝、一帯でおよそ100年ぶりの大地震に見舞われるとは予想もせずに──。
シリアで政府軍と反体制派の戦いが始まってから約12年。バシャル・アサド政権は手に入る武器をほぼ全て使って、自国民を攻撃してきた。だがその破壊の規模も、トルコ南東部を震源とする今回の地震が、シリア北西部にもたらした甚大な被害にはかなわない。
シリア国内の死者数は、これまでに3300人以上に達した(2月10日時点)。瓦礫の下には、まだ膨大な数の人が閉じ込められている。
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反体制派支配地域であるシリア北西部の住民は、とりわけ脆弱な立場に置かれている。
地震前、同地域は世界で最も深刻な人道危機の1つのさなかにあった。住民約450万人のうち、300万人近くがキャンプなどで暮らす国内避難民で、インフラ設備の少なくとも65%が破壊されるか、損傷している。住民の90%はトルコ経由の人道支援が頼みの綱だが、援助目的での越境が認められている地点は、トルコとの国境にあるバブ・アル・ハワの検問所だけだ。
国境を越える大規模な援助活動は国連が調整している。かつては許可された越境ルートが4つあったが、国連安保理常任理事国のロシアが拒否権を行使したため、そのうち3つが閉鎖。ロシアは近年、バブ・アル・ハワの閉鎖に動く構えも見せており、人道上の大惨事になりかねないと、国連の援助団体やNGO(非政府組織)は警告している。
今回の地震で、そのバブ・アル・ハワは機能停止を強いられている。同地点とトルコ国内を結ぶ唯一の幹線道路が大きな被害を受け、国連は援助活動の基盤を失った。
追い詰められたアサド
まさに悪夢のシナリオだ。世界最悪レベルの人道危機にさらされる人々を、破滅的な天災が襲った。厳寒の中、身を寄せる場所のない被災者に援助を届けるすべもない。
国際社会は被災国の1つのトルコに対し、大規模な支援を申し出ている。正しい行動とはいえ、相変わらずシリアは「付け足し」でしかないようだ。アメリカが支援するシリアのNGOが被災地で活動しているとジョー・バイデン米大統領は述べたが、それだけでは十分でない。
現地NGOの代表格である英雄的なシリア市民防衛団(SCD)、通称ホワイト・ヘルメットのボランティア要員はおよそ3000人。地域人口450万人に比べて、あまりに少ない。しかもSCDは大地震ではなく、内戦下の空爆に対応する救助活動などのために設立され、資金提供を受けている組織だ。