「偵察気球」飛来は中国の大失態、背景は謎だらけ
Why the Chinese Spy Balloon is a Huge Embarrassment for Beijing
確実に言えるのは、気球のアメリカ本土への飛来が公表されるまで、中国はブリンケン訪中が実現するよう、事を荒立てまいとしていたことだ。その時点では、中国は米政府が気球の領空侵犯をこれほど重大視するとは思っていなかった節がある。パンデミック中は自主的に鎖国体制を取っていた中国は今、西側とよりを戻して通商関係を活発化させようと目論んでいるが、気球撃墜に猛反発し、敵対姿勢に戻ったことで、関係改善の望みは吹っ飛んだ。
「中国は当初(気球問題に)遺憾の意を表明していたのに、居直りとも取れる敵対姿勢に転じた。こうした対応の変化は、対米関係の改善にはマイナスでしかない」と、米シンクタンク・民主主義防衛財団の中国担当上級フェロー、クレイグ・シングルトンは本誌に語った。
「中国の最高指導者である習近平(シー・チンピン)国家主席がこれほどリスクの高い計画を知らなかったとは考えにくい。ただ、ブリンケンの訪中を控えたこの時期に実施することは報告されていなかったのかもしれないが」
中国の手の内がさらされる
中国は、この「恥ずべき一件」に「できるだけ早く幕引きを図りたい」はずだと、シングルトンはみる。「中国がインド太平洋上空などで活動するアメリカのドローンなどに物理的な報復攻撃を試みることはあり得ないだろう」
中国指導部は、問題の気球は気象観測データを収集するための「民間」の気球で、風に飛ばされてコースを外れたと主張し続けた。それが今や、残骸を回収した米軍の分析によって中国の偵察気球の技術や手法が部分的にせよ世界にさらされる事態に直面している。
米政府は一貫して、気球は機密性の高い米軍基地の上空を飛んでおり、情報収集を目的とする偵察気球であることは疑う余地がないと主張。残骸の分析結果に米世論は高い関心を寄せている。