最新記事

米中関係

「偵察気球」飛来は中国の大失態、背景は謎だらけ

Why the Chinese Spy Balloon is a Huge Embarrassment for Beijing

2023年2月9日(木)19時32分
ジョン・フェン

確実に言えるのは、気球のアメリカ本土への飛来が公表されるまで、中国はブリンケン訪中が実現するよう、事を荒立てまいとしていたことだ。その時点では、中国は米政府が気球の領空侵犯をこれほど重大視するとは思っていなかった節がある。パンデミック中は自主的に鎖国体制を取っていた中国は今、西側とよりを戻して通商関係を活発化させようと目論んでいるが、気球撃墜に猛反発し、敵対姿勢に戻ったことで、関係改善の望みは吹っ飛んだ。

「中国は当初(気球問題に)遺憾の意を表明していたのに、居直りとも取れる敵対姿勢に転じた。こうした対応の変化は、対米関係の改善にはマイナスでしかない」と、米シンクタンク・民主主義防衛財団の中国担当上級フェロー、クレイグ・シングルトンは本誌に語った。

「中国の最高指導者である習近平(シー・チンピン)国家主席がこれほどリスクの高い計画を知らなかったとは考えにくい。ただ、ブリンケンの訪中を控えたこの時期に実施することは報告されていなかったのかもしれないが」

中国の手の内がさらされる

中国は、この「恥ずべき一件」に「できるだけ早く幕引きを図りたい」はずだと、シングルトンはみる。「中国がインド太平洋上空などで活動するアメリカのドローンなどに物理的な報復攻撃を試みることはあり得ないだろう」

中国指導部は、問題の気球は気象観測データを収集するための「民間」の気球で、風に飛ばされてコースを外れたと主張し続けた。それが今や、残骸を回収した米軍の分析によって中国の偵察気球の技術や手法が部分的にせよ世界にさらされる事態に直面している。

米政府は一貫して、気球は機密性の高い米軍基地の上空を飛んでおり、情報収集を目的とする偵察気球であることは疑う余地がないと主張。残骸の分析結果に米世論は高い関心を寄せている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

尹大統領の逮捕状発付、韓国地裁 本格捜査へ

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 5
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 6
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 7
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 8
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 9
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 10
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中