最新記事

米中関係

「偵察気球」飛来は中国の大失態、背景は謎だらけ

Why the Chinese Spy Balloon is a Huge Embarrassment for Beijing

2023年2月9日(木)19時32分
ジョン・フェン

米政府は既に残骸は中国に返還しない意向を伝えており、これに対し中国外務省の毛寧(マオ・ニン)報道官は7日、気球は「アメリカのものではない。中国のものだ」と怒りをあらわにした。

戦狼外交に回帰したような中国の姿勢について、台湾トップクラスの防衛問題シンクタンク・国防安全研究院のクリスタル・トゥはこう解説する。「中国指導部としては、現時点では自分たちの非を認めることは政治的に不可能なので、被害者の立場にしがみつくしかない。容易に反論できるような弁明をしたり、対応がもたついていることから、この一件は彼らにとって予期せぬミスだったと考えられる」

どういうプロセスで気球を飛ばす決定が下されたのか理解に苦しむと、トゥは言う。トゥによれば、北京には世界気象機関の地域センターがあり、中国は地球規模の気象情報の共有の一端を担っている。その中国が上空の気流の状態をチェックせずに、気球を飛ばし、航路を外すことは考えられない、というのだ。

「シベリアからの強力な寒気団でジェット気流が蛇行する現象はもはや珍しくない。今年も1月半ばにカナダの環境・気候変動省が1月末に寒気団の流れが変わり、2月にカナダを直撃すると予報していた」

「遅すぎた」と憤る共和党

中国は民間の気球だと言い張っているが、「民生用の気球ではないことは米政府の諸機関の一致した見方だ」と、トゥは言う。「回収された残骸の分析で、中国の部品調達ルートや技術レベルなどが明らかになるだろう」

米共和党は議会でバイデン政権のこの問題への対応を取り上げ、撃墜のタイミングが遅すぎたとして厳しく追及する構えだ。

下院軍事委員長を務める共和党のマイク・ロジャーズ下院議員(アラバマ州選出)は4日、「スパイ気球がアメリカ本土を横断することを許したバイデン政権の決定に深い憂慮を禁じ得ない」との公式声明を発表した。

気球の存在をすぐさま市民に知らせることを怠ったのは、「議会とアメリカの人々に国家安全保障上の失態を隠そうとする試み」だと、ロジャーズは声明で述べている。

こうした動きに対し、今こそ民主・共和両党が共通の大義のために団結すべきだと、安全保障の専門家は主張している。

「非難すべきは中国共産党だ。仲間内で足の引っ張り合いをしている場合ではない。共に闘わねば」と言うのは、初期のトランプ政権の暴走を抑えた軍人出身のブレーンの一人で、国家安全保障担当の大統領補佐官を務めたH・R・マクマスターだ。

バイデンは7日に行なった一般教書演説では気球問題への直接的な言及を避けつつ、「中国がわれわれの主権を脅かす」事態になれば、「わが国を守るために行動する」とクギを刺した。

ニューズウィーク日本版 ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2026年2月24号(2月17日発売)は「ウクライナ戦争4年 苦境のロシア」特集。帰還兵の暴力、止まらないインフレ。国民は疲弊し、プーチンの足元も揺らぐ

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米耐久財コア受注、12月は0.6%増 出荷も堅調

ビジネス

米一戸建て住宅着工、12月は4.1%増 許可件数は

ワールド

NEC委員長、米国民が関税負担とのNY連銀報告書を

ワールド

高市首相、消費減税「時間かけるつもりない」 市場の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
2026年2月24日号(2/17発売)

帰還兵の暴力、ドローンの攻撃、止まらないインフレ。国民は疲弊しプーチンの足元も揺らぐ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ポーランドが「核武装」に意欲、NATO諸国も米国の核の傘を信用できず
  • 2
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」の写真がSNSで話題に、見分け方「ABCDEルール」とは?
  • 3
    ウクライナ戦争が180度変えた「軍事戦略」の在り方...勝利のカギは「精密大量攻撃」に
  • 4
    生き返ったワグネルの「影」、NATO内部に浸透か
  • 5
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 6
    川崎が「次世代都市モデルの世界的ベンチマーク」に─…
  • 7
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワ…
  • 8
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」で…
  • 9
    アフガニスタンで「対中テロ」拡大...一帯一路が直面…
  • 10
    極超音速ミサイルが通常戦力化する世界では、グリー…
  • 1
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発される中国のスパイ、今度はギリシャで御用
  • 4
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」で…
  • 5
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 6
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワ…
  • 7
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 8
    「目のやり場に困る...」アカデミー会場を席巻したス…
  • 9
    オートミール中心の食事がメタボ解消の特効薬に
  • 10
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中