「偵察気球」飛来は中国の大失態、背景は謎だらけ
Why the Chinese Spy Balloon is a Huge Embarrassment for Beijing
米政府は既に残骸は中国に返還しない意向を伝えており、これに対し中国外務省の毛寧(マオ・ニン)報道官は7日、気球は「アメリカのものではない。中国のものだ」と怒りをあらわにした。
戦狼外交に回帰したような中国の姿勢について、台湾トップクラスの防衛問題シンクタンク・国防安全研究院のクリスタル・トゥはこう解説する。「中国指導部としては、現時点では自分たちの非を認めることは政治的に不可能なので、被害者の立場にしがみつくしかない。容易に反論できるような弁明をしたり、対応がもたついていることから、この一件は彼らにとって予期せぬミスだったと考えられる」
どういうプロセスで気球を飛ばす決定が下されたのか理解に苦しむと、トゥは言う。トゥによれば、北京には世界気象機関の地域センターがあり、中国は地球規模の気象情報の共有の一端を担っている。その中国が上空の気流の状態をチェックせずに、気球を飛ばし、航路を外すことは考えられない、というのだ。
「シベリアからの強力な寒気団でジェット気流が蛇行する現象はもはや珍しくない。今年も1月半ばにカナダの環境・気候変動省が1月末に寒気団の流れが変わり、2月にカナダを直撃すると予報していた」
「遅すぎた」と憤る共和党
中国は民間の気球だと言い張っているが、「民生用の気球ではないことは米政府の諸機関の一致した見方だ」と、トゥは言う。「回収された残骸の分析で、中国の部品調達ルートや技術レベルなどが明らかになるだろう」
米共和党は議会でバイデン政権のこの問題への対応を取り上げ、撃墜のタイミングが遅すぎたとして厳しく追及する構えだ。
下院軍事委員長を務める共和党のマイク・ロジャーズ下院議員(アラバマ州選出)は4日、「スパイ気球がアメリカ本土を横断することを許したバイデン政権の決定に深い憂慮を禁じ得ない」との公式声明を発表した。
気球の存在をすぐさま市民に知らせることを怠ったのは、「議会とアメリカの人々に国家安全保障上の失態を隠そうとする試み」だと、ロジャーズは声明で述べている。
こうした動きに対し、今こそ民主・共和両党が共通の大義のために団結すべきだと、安全保障の専門家は主張している。
「非難すべきは中国共産党だ。仲間内で足の引っ張り合いをしている場合ではない。共に闘わねば」と言うのは、初期のトランプ政権の暴走を抑えた軍人出身のブレーンの一人で、国家安全保障担当の大統領補佐官を務めたH・R・マクマスターだ。
バイデンは7日に行なった一般教書演説では気球問題への直接的な言及を避けつつ、「中国がわれわれの主権を脅かす」事態になれば、「わが国を守るために行動する」とクギを刺した。
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