話を聞かない親×聴いてほしい子ども、親子の危機をすくう「聴く技術」3つの極意
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<子どもとの理想的なコミュニケーションを、漠然とした「気持ち」ではなく、「技術」と「ロジック」で解き明かす>
ある子育て講演会に参加した時のこと。いじめに加担したらしいわが子への接し方について質問した女性に、教育評論家の講師が、「あなた(わが子)には加害者になってほしくない、自分がどんなにあなたを大切に思っているかを繰り返し伝えて」と応え、質問者も他の参加者も大きく頷いていたシーンが忘れられない。いじめた背景や理由は不問に付されたまま断罪され、愛やら正しさやらを一方通行で聞かされる子は立つ瀬がないな、と感じたからだ。
人が生きる上で肝に命じておくべき事柄について子に伝えるのは、親の大切な役割だろう。でも、親や教師から一方的に正論を説かれ、自らの言い分を封じられる子は、自分の感覚や感情まで否定されたように感じないだろうか。また、説教として聞かされる正論がその子の心にどの程度受け入れられ、その後の人生でどこまで功を奏するかもわからない。
そんなモヤモヤした疑問と迷いに決着をつけ、子育てのみならず周囲とのコミュニケーション改善に大きなヒントをもたらしてくれたのが、島村華子著『アクティブリスニングでかなえる最高の子育て』(主婦の友社)だ。
『アクティブリスニングでかなえる最高の子育て』
著者:島村華子
出版社:主婦の友社
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親が子の声に耳を傾け、気持ちや考えを分かち合う
積極的傾聴の意味を持つアクティブリスニングとは、会話の場面で可能な限り相手の話に注意を向け、たとえそれが聴き手の経験や価値観と違っていても、足しも引きもせず、相手のメッセージ、感情、思考を相手の立場で理解しようとする「聴く技術」のこと。
本著は、その考え方や技術を親子のコミュニケーションに生かすことで子の自己肯定感、自立心、社会的能力や学力、親子(さらに他者と)の信頼関係の基盤を築こうという指南書だ。
著者の島村さんは、現在カナダの大学で教員養成に携わる幼児教育の研究者。子どもの主体性や個性を引き出す教育法として、いずれも世界的定評があるモンテッソーリ教育と、レッジョ・エミリア教育の専門家でもある。
「子どもの声を聴くことこそが教育の基本」(レッジョ・エミリア教育)との考え方に貫かれたこの本が伝えるのは、子育ての要諦は親が子の声に耳を傾け、対話することにあるということ。そして、ここがポイントなのだけど、対話とは「意見の押し付けや説得ではなく、互いの気持ちや考えを尊重しあい、分かち合うこと」。
現実を見れば、子どもが親や大人に対し、自分の意見や気持ちを率直に吐露すると、生意気だとか口答えするのか、と拒絶されたり、そんな考えじゃだめだとただちにジャッジされ、否定されるケースがあまりに多いのだ。